7ページ:秘密 ページ7
「それで?あの子と生活してみてどう思った?」
「…あれは本当に生きているのか、という疑問が尽きませんね」
「へぇ」
数日前から一緒に住むことになった子供の死んだ表情を脳裏に浮かべながら、ハンドルを握る。隣にはどこにでもいそうな、しかしどこか気品を漂わせている見た目三十代の女性が助手席に座っていた。
「3歳にしてあの死にかけている目。何に対しても無関心。…ただの子供とは思えませんね」
子供は好奇心の塊だ。普通、何かしらには興味を向けるはず。それなのにあの子は何に対しても一切の関心は持たなかった。自分の世界に閉じこもり、中から鍵を掛けているようだった。
「一体、貴方がたはあの子に何をしたんです?」
「…貴方が知る必要は無いわ。貴方はただ、あの子を育てればいい。まあ、放っておいてもあの子は勝手に大きくなるでしょうけど」
詮索してみようかと思ったが、やはり情報はゼロ。…ダメか。奴らはあの子に酷い目にでも遭わせたのだろうか。正直、あの子と一緒にいる時生きた心地なんて一切しなかった。なんとか笑みを貼り付けて自身は保っていたが、すぐにでも投げ出したかった。
ただ、今焦って情報を集めようとしても足元掬われるだけだ。変に怪しまれるわけにはいかない。
「ほう…まあ、人形のお世話と護衛をするだけならいいですが」
「…ああ、一つ忠告しておくわ」
赤信号の為、ブレーキを踏む。
助手席に座っている女性は優雅に微笑んでみせた。
「情はかけない方がいいわ…あの子の為にも、貴方の為にも」
「おや、貴方が心配するだなんて珍しいですね」
「実験結果にも支障をきたす恐れがあるのよ。適任者は今のところあの子しかいないんだから、モルモットを無駄にしないで頂戴」
さらっとそんなことを言う女性に、ハンドルを握る力を強めた。
「…分かりましたよ、ベルモット」
青信号になったことを確認し、俺は車を発進させた。
「頼んだわよ。バーボン」
互いが互いのコードネームを呼び合い、それ以降会話はしなかった。
さっきの話で思い出した、子供…今は俺が親権を持っているということになっている子供だが、何故か組織から命令をされて育てることになった。
何故俺なのか。本気で疑問に思い、罠も疑って最初は最大限の警戒をしていた。…ただ、ここ数日ずっとこちらに関わろうとはしていない。どちらにせよ、あの子への警戒を解くわけにはいかない。
警戒心を解いたら、命なんて簡単に飛ぶのが裏の世界だ。
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卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか?出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卵かけご飯の醤油 | 作成日時:2019年5月17日 15時