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「ええと…零ちゃん、でいいのかな?」
誰だこのおじさんは、と思いながらも私はこくり、と頷いた。
「ああ、このおじさんはお巡りさんだから安心して大丈夫だぞ」
後ろから少年が読心したようにそう言ったので、私は多少の警戒は解いた。
…少年にどこかに連れてこられたと思ったら、これだ。まあ今の私は周りから見ると身元不明な幼女という肩書きがあるので仕方は無いのだろうけど。
「それで…河川敷で倒れてたみたいだけど、どうしたんだい?親は?」
「…覚えてない」
「え?」
まさか人が自害した所を見て、急にいたたまれなくなって怖くなったから逃げたとか言えない。というか言ったら、確実に面倒なことになる。
…あれは、私の胸の内に留めておくべきだ。
「…叔母さんと一緒にいた。…でも気付いたら走ってた」
「走ってた?…何かから逃げてたのか?もう少し詳しく頼む」
「…叔母さんが買い物に行ってる間、車で待ってた。…はっきりと覚えてるのは、それだけ」
「そうか…」
おじさんはそれだけ短く言うと、深く考え込んだ。
「…君を昼、交番に連れて行く。君を探してる親御さんが見つかるかもしれないからな」
「…」
再び、私は頷いた。…私が家の場所を知っていれば問題は無いのだが、どうやらここは杯戸町と言って私の住んでいる町の隣町らしい。そして、散歩でもこちらの町に来たことはないので道など全く分からない。
方向すら分からないというのに帰ろうとしても、返って更に迷子になるだけだろう。
「そういや腹減ったろ。青子が今トースト焼いてくれるから、ちょっとだけ待ってな」
確かにお腹は空いてきた。何気に晩御飯は食べていないし、昨日思いっきり体力を消耗した為エネルギーが足りない。
青子、という人については知らないが、トーストが出るのなら有り難く頂こう。
しばらくすると、香ばしい焼き立ての匂いを辺りに漂わせながら、少年と同じくらいの年の少女がトーストを持ってきた。
「はい、どうぞ!…まだ熱いから、気を付けてね?」
恐らくは、この子が青子という子なのだろう。…明るそうな子だ。
気を利かせてくれたのか、数種のジャムを持ってきてくれた。どれがいい?と言われたので、とりあえず苺ジャムを選ぶ。すると代わりに塗ってくれたので、私はトーストに小さくかぶりついた。
「…っ」
「今、熱いからって言われたばかりだろ…」
私が熱そうに舌を出すと、少年に指摘されてしまった。
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卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか?出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卵かけご飯の醤油 | 作成日時:2019年5月17日 15時