28ページ:返答 ページ28
「…なら何故、言わなかった?」
私が起きていたことを。別に狸寝入りだと知っていたのなら、指摘してもいいではないか。
私が訝しげな視線を向けると、その問いは少し間を置いて返ってきた。
「…君の機嫌は損ねたくないからね」
帰ってきた答えに、呆気にとられた。…私にとってはとってもくだらなかった答えだった。なんだ、そんなことか。と肩透かしを食らうほどの。
…本当にそれだけなのか?と一瞬だけ疑ってしまうほどの。
「ところで風邪はもう大丈夫なのかい?看病出来なくてごめんね…どうしても外せないお仕事があったから」
申し訳なさそうな顔でそう言いながら体温計を用意し、テキパキと私に体温を測らせる。
測っている間私はソファに座らされ、保護者が水を用意してくれたので少し飲む。気分が少し楽になった。
しばらくするとピピピッ、と鳴ったので脇から体温計を取り出すと、朝より幾分かはマシだったがそれでも熱はあった。
「…寝た方がいいな」
隣で私の体温計を覗き見たおじさんがそう言った。…分かってはいても眠れないのだ。仕方ないだろう。…言い訳にしか聞こえないだろうが。
「眠れないのかい?」
保護者が私と目線を合わせてそう言った。私はそれに小さく頷いた。
「しょうがないな…なら読書は構わないけど、少しでも眠くなったら寝るんだよ」
やれやれ、と言いたげだが温かい目で見るものだからなんだかむず痒くなってしまう。…だが一応は読書の許可をもらった。あと1冊で借りた本は全て読み切れるので、言葉に甘えてそうしよう。
私は保護者と目を合わせると、ソファから降りて自室へと歩いていった。
「お大事にな」
私がリビングから背を向けると、おじさんの言葉が飛んできた。この人の声色も優しげで、何か返そうか、と思ったが結局やめて無反応のまま自室へと入ってしまった。
「…まあ、あんな感じなんだよ。スコッチ」
「へえ…お前も苦労してるなぁ、バーボン」
部屋に入った瞬間、僅かだが確かにリビングの方からそう聞こえた気がした。
一瞬だけ興味を示したが、私には何を話しているのか分からなかったのでとりあえずは読書に集中することにした。
そういえばバーボンとスコッチってお酒の名前ではないか。しかもウイスキーの。
読み終わった本を机の上へと置くと、ふとそんなことを思い出した。
…お酒があだ名なのだろうか。にしても変な愛称だ。
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卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか?出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卵かけご飯の醤油 | 作成日時:2019年5月17日 15時