12ページ:未練 ページ12
先生は私の保護者に気付くと、保護者を連れて別の部屋へと入ってしまった。…ついに先生が保護者にチクるつもりなのだろうか。あの保護者は私に怒ることは無かったし、面倒にならなければ良いのだが。
「ね、ねえ!」
「…?」
さっきの女の子が私に話しかけてきた。
…またか。
「明日こそ、あそぼ!」
この子にとっては、勇気を振り絞って言った言葉なのだろうが…何で私に固執するんだか。
「何で私なの?」
「だって、いっつも一人だから…寂しくないのかなって」
…あんたには私はそう見えているのか。
「別に…一人がいいから」
私が素っ気なく返すと女の子は悲しげな顔をした。…女の子は再び、いつも一緒にいる男の子達の元へと戻った。諦めてくれただろうか。
少し見送ってから本をパタリと閉じ、帰る支度をすると先生と保護者が帰ってきた。
「…待たせてごめんね。もう帰ろうか」
私は肯定の意を示し、荷物を持って出ていった。
「またね!」
後ろから聞こえてきたあの女の子の声は、聞こえないふりをした。
「あの子のこと、嫌いなのかい?」
「別に」
保育園と家の距離は少し離れている。その為、移動は車だ。
私は助手席に座り、隣の運転席には保護者がいる。
「先生から聞いたよ。ある女の子が話しかけても冷たいって」
「…」
「友達は大切にした方がいいよ」
大切に、か。…前世では作った。何人も。うわべだけでなく、信じられるような友達が沢山。
でも、死んだ時には走馬灯が流れてくる…その走馬灯に友達が映れば映るほど、胸を締め付けられた。…心苦しかった。まるで誰かに奪われていくように。
それは喪失感だった。
「…一人で…いい」
友達がいっぱいいた前世より、仲が良い人が限りなく少なかった前々世の方が死んだ時の喪失感というのが少ないことに気付いた。
ならばどうせこれから何度も味わうことになるだろうし、友達は少ないどころかいない方がいい。どうせ、私は何度も死んで何度も生き返る。直感的に私はそう確信している。
だから、一つ一つの生に執着を残さない方がいい。
「一人でいい、か…人間、一人じゃ生きていけないよ。誰かと助け合って生きていく生き物だから」
どこか悲しげに口を開く保護者の顔は見なかった。見なくても、表情は予想出来た。
「それに、一人は寂しいよ。心は満たされない」
だからこそ、この世からサヨナラをする時、心置きなく出来るのに。
「…未練は無い方がいい」
私は否定した。
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卵かけご飯の醤油 - みつるさん» ああ、確かに盛者必衰の方が多分内容的に合ってますね。私、てっきり諸行無常も盛者必衰も同じような意味かと思ってて…今ウィキ先生で調べてみました。どうやら意味合いが違うようです…わざわざご報告、ありがとうございます。修正しますね。 (2019年5月29日 19時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
みつる - 49ページなんですけど…諸行無常ってなんとも言えないという意味だと思います。多分盛者必衰の間違いかと…間違ってなかったらすみません(>_<) (2019年5月29日 18時) (レス) id: d6e134e20f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - すすぎさん» そうなんですか…もしよろしければその私の小説と似ているという小説の題名を教えてくれませんか?出来ればその小説と話が被らないようにプロットを書き直すつもりなので… (2019年5月26日 12時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
すすぎ - あまりにも似てるものがあったので..... (2019年5月26日 11時) (レス) id: 28118ed8c0 (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯の醤油 - ありがとうございます。まさか読みやすいというコメントを貰うとは思っていませんでした…嬉しいです。これからも更新頑張ります。 (2019年5月25日 14時) (レス) id: ecf6ee3b9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卵かけご飯の醤油 | 作成日時:2019年5月17日 15時