番外編【3】#25 ページ37
マリアside
エルヴィンさんに憲兵団の倉庫から助けられてから数日、私は幸せな気持ちで仕事をしていた。
今日はその憲兵団本部でお仕事をしている。
怖い思いもしたが、憲兵団の医務室でエルヴィンさんに抱きしめられたこと、家まで送ってもらったこと、そしてキスしたこと......。
思い出すだけで顔がにやけてしまう。
私は気づいてしまった。
キスする前からエルヴィンさんに恋していたんだ。
金髪の整った髪にスラッとした高い背、美しく透き通る青い瞳、力強くも優しい眼差し。
そのすべてを思い出すだけで、私の心をキュッと高ぶらせた。
仕事を終わらせ、帰ろうとした時、憲兵団の休憩所なのだろうか。
二、三人の憲兵が話をしているそばを通った。
休憩所の外を歩いていたため、憲兵から私は見えなかったのだろう。楽しそうに話をしていた。
「いいよな〜、俺も彼女が欲しい。上官や団長クラスなら女に不自由しないだろうな。」
「団長といえば、あのエルヴィン団長も今度貴族の令嬢と寝ること前提にお見合いするらしい。」
私は思わず足を止め、息を飲んだ。
「エルヴィン団長って何考えているか分からないけど、巷では女性に人気らしいからな。手っ取り早く寝るのにはいいんじゃないか?」
「いいなぁ〜、俺もモテてぇ。」
私は足元の土を見つめ、固まって聞いてしまっていた。
エルヴィンさん、今度お見合いするの?女の人と寝るために?
頭の中がぐるぐるし出して、足元がふらついた。
ああ、私、今まで何期待していたんだろう。
憲兵の楽しそうな話し声から早く離れたくて、いつの間にか足早に歩き出していた。
憲兵団本部をでると涙が次々溢れ出し、いたたまれず私は走り出した。
走って走って、前をよく見てなかったから馬車に轢かれそうなった。
馬車を運転していた人にバカヤロー!と怒号を浴びながら、さっき聞いた話が頭から離れない。
そうだ......、団長クラスの人が私に本気になるはずない。
キスなんて、エルヴィンさんからしたら挨拶みたいなものだったのかもしれない。
私だけ勘違いしていたんだ。
「バカだなぁ......、私。」
もうやだ、何も考えたくない。
ただ、ひたすら泣いて帰った。
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作者名:ナツメグ | 作成日時:2017年5月22日 21時