番外編【3】#18 ページ30
マリアside
一瞬何がどうなったんだろうと思った。
私は今エルヴィンさんの腕の中にスッポリ収まっている。
「マリア、ありがとう。だが今はいい。」
背中に回された手が大きくて、温かくて優しい匂いがする。
「辛かったね、お父さんを亡くして一人で生きてきて。君はよく頑張っている。」
エルヴィンさんにそう声をかけられたらなぜだか、今まで我慢していたものが堰を切ったようにどんどん溢れてきた。
本当はとても怖かった。
頼れる人もなく、一人で抱え込んでいた。
苦しかったし、寂しかった。
「エルヴィンさん、私......。」
エルヴィンさんは抱きしめながら優しく微笑んだ。
「気持ちは溜め込まないで、吐き出せばいい。私は何があっても君の味方だ。」
そして私はエルヴィンさんの胸で子供のようにしばらくワァワァ泣いた。
今まで我慢してきたことや怖かったことが涙として溢れでてきた。
エルヴィンさんはただ黙って私を抱きしめ、背中や頭を撫でてくれた。
それは優しくて暖かくてフンワリ包まれて安心できる。
どのくらい泣いただろう。いつの間にか気持ちも体も落ちついていた。
「エルヴィンさん、ありがとうございます。もう大丈夫です......。」
顔をあげるとすぐそばにエルヴィンさんの顔があり、思わず固まってしまった。
青く透き通る目に吸い込まれていきそうで、息が止まりそう。
......きれいな人。
この人の唇に触れたい......。
エルヴィンさんも私をジッとみつめている。
もしあなたが私と同じ気持ちなのなら.....。
コンコン
「失礼します!エルヴィン団長、今よろしいでしょうか。」
その声に私達はハッと顔を背け、お互いそっと体を離した。
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作者名:ナツメグ | 作成日時:2017年5月22日 21時