検索窓
今日:5 hit、昨日:9 hit、合計:35,744 hit

番外編【3】#18 ページ30

マリアside


一瞬何がどうなったんだろうと思った。


私は今エルヴィンさんの腕の中にスッポリ収まっている。


「マリア、ありがとう。だが今はいい。」


背中に回された手が大きくて、温かくて優しい匂いがする。


「辛かったね、お父さんを亡くして一人で生きてきて。君はよく頑張っている。」


エルヴィンさんにそう声をかけられたらなぜだか、今まで我慢していたものが堰を切ったようにどんどん溢れてきた。


本当はとても怖かった。


頼れる人もなく、一人で抱え込んでいた。


苦しかったし、寂しかった。


「エルヴィンさん、私......。」


エルヴィンさんは抱きしめながら優しく微笑んだ。


「気持ちは溜め込まないで、吐き出せばいい。私は何があっても君の味方だ。」


そして私はエルヴィンさんの胸で子供のようにしばらくワァワァ泣いた。
今まで我慢してきたことや怖かったことが涙として溢れでてきた。


エルヴィンさんはただ黙って私を抱きしめ、背中や頭を撫でてくれた。


それは優しくて暖かくてフンワリ包まれて安心できる。


どのくらい泣いただろう。いつの間にか気持ちも体も落ちついていた。


「エルヴィンさん、ありがとうございます。もう大丈夫です......。」


顔をあげるとすぐそばにエルヴィンさんの顔があり、思わず固まってしまった。


青く透き通る目に吸い込まれていきそうで、息が止まりそう。


......きれいな人。


この人の唇に触れたい......。


エルヴィンさんも私をジッとみつめている。


もしあなたが私と同じ気持ちなのなら.....。


コンコン


「失礼します!エルヴィン団長、今よろしいでしょうか。」


その声に私達はハッと顔を背け、お互いそっと体を離した。

番外編【3】#19→←番外編【3】#17



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (31 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
104人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナツメグ | 作成日時:2017年5月22日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。