はじめてのおしゃべり ページ3
「その絵はお前が描いたのか。」
目の前の、私から見れば巨人の牛島くんはそう言った。
私は少し黙りこくったあとに、
「うん……」
としか答えられなかった。
しばしの沈黙。…え?これ私から声かけないとだめかな…
「えっと…あの…牛島くんは何してるの?」
「何している…お前の絵を見ているだけだが?」
あ、この人すごい天然だ……!
「そうなんだ…あの…この絵を見てどう思うかな…」
偶然であろうと、この絵を見たのだ。この天然な牛島くんから感想を聞こうと思った。
「綺麗だと思う」
その一言は何故か大きく私の心に響いた。
「そっか…ありがとう牛島くん」
素直な感想なのが、直に伝わって来るのがわかる。無表情な顔をしていても、なんとなく嘘はついていない…否、嘘をつかない人だとは思う。牛島くんは。
「ああ。…お前というのも良くないな。名前は、藤兎と言ったか。」
意外だった。牛島くんは失礼かもだけど、私みたいな目立たない人の名前を覚える訳が無いと思っていた。
「あれ、名前知ってくれてたの…?同じクラスになったのは3年生で初めてだし、お話したのも今日が初めてだけど…」
「藤兎A、その名前と一緒に飾られていた絵を少し前に廊下で見た。それが印象的でな。顔はクラス替えの時に見たくらいだが」
牛島くんはバレー一筋だと思っていた。いや、多分そうなのだろう。たまたま見つけた私の絵が牛島くんの目に付いただけ…だと思う。
「こんな絵でも誰かの目に止まってくれるのなら、なんか嬉しいな。ありがとう」
「ああ」
たったその一言だけだけど、私の心は胸いっぱいになった。
123人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:矢風 | 作成日時:2019年9月30日 22時