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Your Song(side N) ページ20

リビングでテーブル上の食器をまとめていると、キッチンから聴き覚えのある歌声が聞こえてきた。



橘さんのよく通る、弾む歌声。
ほろ酔いなのかな。



優しく甘い歌声に自分の顔がほころぶのがわかる。



エルトン・ジョンの “Your Song”



俺も一緒に口ずさみながらキッチンへ向かい、橘さんと視線を合わせた。



すると歌うのをやめて、はにかむ橘さん。
その表情に、思わず緩む俺の口元。



胸くすぐられるな、そのカオ。
照れてないで、俺と一緒に歌おうよ。
この前夏色を歌った時の様に、共に音楽を楽しもうよ。



そんな期待を込めて俺がメロディを奏でれば…



ほら、ね。



君も歌わずにはいられないと思った。



たまに俺と目が合うと、恥ずかしそうに微笑んで視線をそらす君。
俺はそんな君の表情から目が離せない。



ふわふわとした心地良い時間が流れてる。
ずっとこうしていたい。
橘さんがいて音楽があれば、俺は幸せかも。





『なんかさー、みおとニッシーが新婚のカップルに見える』



2人で気持ち良く歌っていると、いつの間にかリビングに戻っていた香織に言われた。



「あははっ、俺もそう思ってた。ね、みお」



『やめてよ、それはないから』



全力で否定する橘さん。



このギャップがたまらない。
彼女は歌うのをやめた途端にツンとした態度になるから、俺のS心を刺激する。



ちょっと、ちょっかい出してみるか…



「俺さ、みおがいて、音楽があれば幸せ」



俺はそう言って、彼女の顔にかかっていた髪をそっと耳にかけた。



橘さんははっとした表情で俺を見て、顔を真っ赤にして俺が触れた右耳を手で覆った。



やば。
かわいい。



『西島君てなんか軽い、からかわないでよ』



「あはははっ、ごめんごめん。ついいじめたくなっちゃった」



『チャラ島、調子に乗るな』



「はいはい、香織様。ごめんなさーい」



『全然思ってないでしょ、西島君』



と言って両頬を膨らませてる橘さん。



それ、ドSの俺には全く効果ないよ。
むしろ逆。
ますますいじめたくなる。



橘さんの膨らんだ頬に手を伸ばそうとすると



『はい、それもダメね』



香織に釘をさされた。



「ちっ、読まれてたか」



『ぷっ、西島君て本当におもしろいね』



橘さんが吹き出して笑った。
その笑い声に俺の胸が高鳴り、熱くなっていった。

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作者名:さら | 作成日時:2018年10月29日 0時

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