君と (ページ19)

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気まずい(side N) ページ19

「おい、佑一郎、お前んち着いたぞ」

『う〜西島〜もっと飲もうよ〜』

居酒屋で惚気話を散々していた佑一郎が、珍しく酔っ払ってしまった。
手に負えなくなりそうだったから、早めに帰すことにした。

よっぽど嬉しかったんだろうな。
香織との結婚が決まって。

タクシーを降りて、佑一郎の肩を支えながらなんとか玄関の中へ。

華やかな女子の笑い声が聞こえる。
香織の友達がいるのか。

やべ、俺眼鏡してない。
マスクも持ってない。

一瞬焦ったけど、佑一郎が橘さんの名前を呼んだから安心した。
同時にこの前の、電話での橘さんの甘ったるい声を思い出してしまった。

だめだ、気まずい…

リビングに入ると、香織が呆れた表情で佑一郎を迎えた。

橘さんは俺と目が合っても特に表情を変えず。

気まずいと思ってたのは俺だけかよ。
バカみてぇ。

佑一郎を寝室へ連れて行き、着替えは香織に任せてリビングへ戻ると、橘さんが片付けをしていた。

俺も手伝おうとテーブルへ腕を伸ばすと

『いいよ、座ってて。コーヒー入れようか？』

と気遣ってくれる彼女。

「これ位運ぶよ、それで一緒にコーヒー飲もう」

俺がそう言うと、橘さんは “ありがとう” と言って柔らかく微笑んだ。