7色の後ろ側 9《赤》

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もう辞めた私がずっとグループにいるのはおかしいなっていうのは、思っていて。

熊谷さんだっているんだし。
ただ皆が私にくれるメッセージが嬉しくて、なかなか抜けれず。


ツアーファイナルが無事終わったら。って勝手に決めていた。
そして無事に終わって。
皆ライブ後で忙しくしているんだろう、そのタイミングでグループを抜けた。




事務所前の報道陣も落ち着いたようで、明後日には家に帰れるらしい。
世の中では毎日毎日いろんな事が起きていて。
そりゃ、1つの事件にずっと構っている程暇じゃないのは事務所も報道陣も、同じなんだろう。



病院から帰ってきて、本気で探す気なんてないけどとりあえず求人サイト見たりして。

未来の事考えようとしてはみるけど、さっぱり何も浮かばない。



私が今したい事。


濱田軍団とバス釣り。
神ちゃんと古着屋巡ってお買い物。
淳太くんと美和と大毅とで動物園デート。
照史くんとシーサー連れてお散歩。


そんなの無理なのわかっていて。


...せめて皆が活躍する姿を、これからも側で見ていたかった。



何度もそんな事考えて、それは無理なのに気付かされて、また絶望。
何が辛いって、この事を話せる相手がいないって事。
誰にも言えないって辛い。




《ブーブーブーブー》



手の中のスマホが震えたけど、そこに表示されたのは見た事ない電話番号。

なんだか怖くて、スルーした。
だってもし、どうにかこうにか嗅ぎつけた週刊誌の人とかだったら。

少ししたら切れた着信は、留守番メッセージを残していて。
恐る恐る聞いて、声の主に慌てて掛け直した。



「お疲れ様です、Aですっ」

ジ『やぁ、今ホテル？迎え寄越すからちょっとお茶でもしよう』

「え、は？」

ジ『15分後に降りてきて。名前言えばわかるから』



穏やかな声でそう言って通話を切った社長の真意がわからないまま、とりあえずメイクポーチを手に取った。

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