六十八松目 「本当の自分」 ページ29
赤い夕陽に照らされながら、私はふと一松に口を開いた。
『なぁ一松』
「ん。」
『お前って友...兄弟に嘘ついたこととかあるか？』
「お前友達って言おうとしただろ.....まぁそりゃいつも一緒にいる中だからな。嘘ぐらいつくこともあるよ。」
そうか。なんて呟くと一松はなんで、と興味な下げに聞いてきた。
『実は私...この怪我のことを皆にまた隠そうとしたんだ。もう心配させないって決めたはずなのに』
[あぁ、やっぱり自分は何も変えられないんだな]って心の底から思った。
また新しい自分を作っても、結局元の自分に戻ってしまう。
....昔はこんなんじゃなかったのになあ
「それでいいんじゃない。」
『え...？』
「それが一之瀬だから、何も変えなくていいんだよ。
一之瀬は心配させたくないから誰にも言わないんだろ？それは俺たちにとっていいのか悪いのかは知らないけど、俺にとっては一之瀬のいい所...だと思う。」
なんで俺がこんなことを...なんてぼそっと呟くが、ふぅっと息を吐きそのまま続ける。
「とにかく一之瀬は一之瀬だ。他人がお前の中身を決めつける話じゃない
そのままでいいんだよ、一之瀬。」
私はその一言を聞いた時、どくっと心臓が跳ね上がった。
【AはAのままでいいのよ】
小さい頃に聞いた母親の言葉と一松の言葉がリンクする
そうか...母さんも昔同じことを...。
...私は今まで出会ってきた友人を無くさないように自分を殺そうとしていたんだ。
友情は例えるならトランプタワーみたいなものだ。間違ったところに少しでも触れてしまうとすぐに崩れてしまう。
それを崩さないために私は自分を...
『ははっ...情けないなぁ...』
目から出てきそうなものをぐっとこらえながら私は一松の方を振り返る。
『ありがとな一松！...ちょっとすっきりしたよ。』
にっと満面の笑みで一松を見ると、一松は目を見開いた。
「....一之瀬っていろんな表情するんだな。」
心臓に悪いわー。なんてぼやく一松はすたすたと歩き出した
『フッ、褒め言葉として受け取っておくぜベイベー』
「殴るぞ」
『うん、私も今の自分を殴りたい』
そんなこんなでカラ松をディスりながら帰っていると、私のマンションの前に来た。
『今日はありがとな一松。』
「どーいたしまして。今度猫缶おごりな。」
はいはい。と笑って返す私を見て、一松はマンションを後にした。
六十九松目 「違う風景」→← 六十七松目 「可愛いは正義？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 165人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
春の黒猫(プロフ) - なめこ豆腐味噌汁さん» コメントありがとうございます＾＾応援してくださって作者は感謝感激です！これからもよろしくお願いしますね＾＾ (2018年3月18日 2時) (
レス) id: 94c170d235 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ豆腐味噌汁(プロフ) - 更新待ってました(´∀`)この作品ほんと好きです!!!!!!!!!愛してます!!!!!!!!!なので更新頑張って下さい!!!!!!!!!ほんとに!!!!!!!!!応援してます!!!!!!!!! (2018年3月4日 15時) (レス) id: c4290caa64 (このIDを非表示/違反報告)
春の黒猫(プロフ) - 和蘭芹さん» コメントありがとうございます！長い間更新できていなくてすみません...ただ今作成中ですので少々お待ち下さいませ！ (2018年3月3日 15時) (レス) id: 94c170d235 (このIDを非表示/違反報告)
和蘭芹 - めっっっちゃ良いところで切られたので雄叫びあげました(てか何ですかコレ…！文才アリアリのアリですよ！！更新ずっっと待ってます！！応援してますううううん”ん”ん”ん” (2018年2月22日 23時) (レス) id: 0bd5b50639 (このIDを非表示/違反報告)
春の黒猫(プロフ) - なめこ豆腐味噌汁さん» コメントありがとうございます(^^) まさか更新をずっと待ってくださっていた方がいるとは…泣 更新もぼちぼち頑張ります( ´ ▽ ` )ﾉ (2018年1月15日 0時) (レス) id: cc81ffe234 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はりゅりゅ | 作成日時：2016年6月5日 1時
