おかあさんではありません！4【歌.い.手】

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目の前でにこにこと笑う96猫さんは非常に可愛らしいのだが。

「推しがアイスティー飲んでるぅ、可愛ええ〜」
「あの飲みづらいです」

私の一挙手一投足にいちいち反応するので非常に困る。

「もう引退した身なので...」
「なんで辞めちゃったん？」
「...あー、それは」
「.....あ、ごめん、言いたくないよな」

何となく事情を察してくれたのか、96猫さんは口をつぐんでくれた。

「あの、私も96猫さんの歌大好きなんです。このお仕事する前はよく聞いてたんですよ」

引きこもっていた頃、ネットでたまたま見つけた96猫さんの動画。
女性なのに色んな声色を出せるし、歌の音域も広い。
ただただ凄いと関心した。
こんな人がいるなんてと感動したのを覚えている。

「だからちゃんとお会いできて嬉しいです」と言うと、96猫さんの顔がみるみるうちに赤くなった。

「...ちょ、恥ずかしい」
「さっきの仕返しです」

なんて、お互いに笑いあった。
こうやって女の子と話すのいつぶりだろ。
学生時代の友達は地元にいるから会えないし、いろいろあったせいで女の子と関わるのが面倒臭いと思ってしまった時期もあった。

「わしのことくろちゃんって呼んで。歳も近いしタメ口でいいよ」
「え？でも、」
「Aちゃんと友達になりたい」

真っ直ぐに見つめられ、少しドキッとした。
ストレートに言葉を伝えてくれる96猫さんは正直好きだ。

「あ、えと。私でよければよろしく...くろちゃん」
「ああああ！やっぱり推しが可愛ええぇぇぇ！！」
「それはやめて！」


(お友達が出来ました)

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