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ページ28

目を覚ますと、最初にやることがある。

手を、まっすぐ天井に伸ばし、グッと握って、また開く。

体を起こして、深呼吸をする。

ベッドから降りて、机に並べられた本を一冊手に取る。

タイトルのない。中は白紙の文学書。

私に与えられた役目を確認して、文学書を元の場所に戻す。

振り返って、サイドチェストに置かれた『首輪』を手に取り、首につける。

ひんやりと冷たい感触に目が冴える。

私がこの体を使っていると、ようやく自覚できる。

そうして、いつもと変わらないことを確認して、ため息をつく。

安心と同時に、恐怖が来る。

いつか自分が消えるという、変わらない事実を確認する。

そうして私の一日は始まる。

異能力となった彼女と会話したのは、昨日のこと。

ヨコハマ郊外で起きた、通称『DEAD APPLE事件』から、丸一日が経っていた。

戻した本をもう一度抜き出して、手中のそれを眺める。

右手で首に触れれば、いつも通り、先ほど付けたばかりの器具がある。

声に出さなければ、私の異能力は発動されない。

奴らが私を管理するために取り付けた『首輪』。

疑似声帯のほかに、GPSと、今はもう壊れた盗聴機能がついている。

これをつけている限り、奴らが私を手放す気はない。

これをつけている限り、私の行動は奴らに監視され続ける。

これをつけている限り、私の身に何かあったと判断されれば、奴らがすぐに駆け付ける。

これをつけている限り、私の異能力は発動されることは無い。

これをつけている限り、私はこの世界に縛られている。

これは、私につけられた『飼い犬』の証し。


「はぁ……」


ため息を一つ零す。


「それでほっとしている私がいるんだものな……救いようがない」


これを付けていれば私に自由は無いが、私はこの世界に居られる。

縛られて、強制的にいさせられる。


「ほんと、救いようがないなぁ……」


ため息と乾いた笑みが漏れる。

彼女は全部、見抜いているのに、私はずっと、知らん顔だ。

・→←とあるナナシの誕生日



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設定タグ:文スト , 文豪ストレイドッグス , 江戸川乱歩   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/  
作成日時:2021年4月24日 1時

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