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「だって、私がいっぱい『好きだ』って伝えてた人じゃないじゃん?むしろ、どちらかっていうと無反応だった人」
「無反応ってほどでもなかったが、まあ、そうだね。君の好きな人だったから遠慮したってわけでもないし、単に好みの違いだろうね。紅茶と珈琲のように」
「ねー。まさかのほぼほぼ真反対って。それってさ、私の人格が異能力になったのと何か関係があったりするのかな?」
「さあ、それは私にもわからない。この世界に来た時に、何か知らない作用が起こったのか、ただの偶然か。それとも、君が無意識のうちに取った延命措置か」
「そっか。ま、その辺はもうなんでもいいや」
「聞いといてそれかい」
「わかんないなら、議論しても仕方ないじゃん?」
「確かに」
ふくろうと影は、くつくつと笑った
ころころ話題が変わっても、それが尽きることは無い。
長年の友人のように、2人は、会話を続けた。
「いやぁ、まさか、ふくろうが乱歩さんとどっこいどっこいの頭脳持つとは思わなかったよ。やっぱ、読書すると頭良くなるの?」
「さてね。私にもよくわからないが、そうなんじゃないか?それに、君の記憶もずいぶんと助けてくれている。君の記憶がなければ、私は彼の名探偵をしのぐことはできないさ」
「それってなんかずるじゃない?あらかじめ答え知ってるわけだし」
「でも、君が語りかけてこなければ、私はその記憶を知ることさえできないんだから、良いんじゃないのかい?」
「ま、そっか。じゃあ、私は、これからも、あんたの異能力として、未来を知るものとして、あんたが生きる手助けをすることにするよ」
「……君が、私に伝えたかったのは、それかい?」
空になったコップに珈琲を注ぎながら、ふくろうが問いかける。
揺れる水面に、黒い影が映る。
表情の読めない、真っ黒な身体に、赤い宝石だけがキラキラと輝いている。
ため息をつき、『参った』というように、肩をすくめて首をかしげて見せた。
「ほ〜んと、何でもお見通しなんだからな〜。私も、もうちょいまじめに勉強しとけばよかったかな」
わざとらしい明るい声で影は云う。
「思ってもないくせに」
「ばれたか……。まあ、見抜かれるだろうなぁとは思ってたし、あんたのことだから、聞いてくるだろうとは思ってたけど……」
背もたれに寄りかかりながら、腕をカウンターの上に投げ出す。
下から伺い見るように、見えない瞳がふくろうを見つめる。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2021年4月24日 1時