検索窓
今日:37 hit、昨日:4 hit、合計:9,156 hit

ページ22

「あんたのその生き方はさ、私への罪滅ぼしのつもり?」


「……」


ふくろうはじっと押し黙り、揺れる水面を見つめていた。


「いいや」


首をかしげて、ふくろうは答える。


「嘘が通じないって言うのは、わかってるでしょ?私、自分の癖は把握してるつもりなんだけど。ついつい無意識にやっちゃうだけでさ。あんたもそれは同じだし、あんたのそれはわざとも含まれてる。そうでしょ?」

「……そうだな」


ふくろうは、瞳を閉じながらゆっくり頷いた。


「大体、乱歩さんに向かって『私の気持ちに寄り添いたい』なんて言ったくせに、本人前にしたら誤魔化すってのは、無理があるよ。私はずっとあんたの中で、この世界を見てきたんだから」

「ああ。知っている」

「もう一回聞くよ。『あんたのその生き方はさ、私への罪滅ぼしのつもり?』。体をもらい、記憶を押しのけ、『ふくろう』という名をもらった自我の」

「ああ、そうだよ」


鋭い視線を受けながら、ふくろうは目を開けて影を見つめた。

ゆっくりと、けれどもしっかりと、嘘偽りのない瞳で、頷いた。


「君の言う通り、君の体を奪い、君の未来を奪ったことへの罪滅ぼしのつもりだ。できることなら、君が好きだった彼のことも助けたかった」

「そして、私に体と未来を返すために、元の世界に戻る方法を探してる」

「名探偵には、断られてしまったがね。ある程度の見当はついている」

「そんなことを、私が望んでいるとでも?」

「望んでいないことはずっと昔から知っていた。でも、私の気が済まないんだ」


ふくろうの言葉に、影は呆れたようにため息をついた。額に手を当て、カウンターに肘をつく。


「あのさぁ……ふくろうって頭いいくせにバカだよね」


『バカ』を一際強調したその言葉に、ふくろうは少しだけ首をかしげた。


「君の未来を奪ったのは私なのには違いないだろう?」

「まあ、そうなんだけど。そうなんだろうけどさ、そうじゃないじゃん。大体、私がなんで安吾を恨まずにいるか知ってるでしょ?私が恨むのはいつだって『元凶』だからだよ。私の未来を奪ったうんぬんかんぬんは確かにあんたが責任を感じるに値するかもしれない、けど。私が重視するのはそこじゃない。『そもそも』なんだよ。そもそも、政府が『白紙の文学書で人を生み出す』なんて思いつかなければ、私はこの世界に居ないし、あんたも生れなかった。そうでしょ?」

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (24 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
28人がお気に入り
設定タグ:文スト , 文豪ストレイドッグス , 江戸川乱歩   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/  
作成日時:2021年4月24日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。