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「空、白んで来たね」
「そうだね。もうすぐ朝日が昇る。……君のタイムリミットだ」
「このまま、私が分離したまんまでいたら、ふくろうは異能力者じゃなくなる」
「特務課から解放されるだろうし、君も、私から分離して自由になれる」
「でも、帰れるとは限らない」
「……」
「ねぇ、ふくろう。そろそろ折れてくれると、私は安心して貴方の中に戻れるんだけど」
「それはできないなぁ」
ふくろうは、温かいままの珈琲を一口飲む。
ほろ苦くて甘い珈琲。それでも、眠気が消えることは無い。
のろのろと影が起き上がり、窓の外を見つめながら呟く。
「私は、この世界に居ちゃいけない存在なんだからさぁ」
「それを言うと、私もそうじゃないのかい?」
「まあ、もともと存在してなかった存在ではあるけどさ。ふくろうの人格が、この世界に順応するために生まれたものであるなら、あんたはこの世界に居てもいい存在でしょ。私はただの異物」
コップに残った珈琲を一気飲みし、胸元の赤い石に手を置いた。
ふくろうの視線を受けながら、影は口を開いた。
「……ねえ、ふくろう」
「なんだい」
「私の未来を奪ったって、申し訳なく思ってんなら、私の分まで幸せになってよ」
パキン。と軽い音が鳴って、朝日に破片がきらめく。
影の持っていたカップが、カタンと音を立てて、カウンターの上に落ちた。
空になった底を見つめながら、独りぼっちになった店内でふくろうは答える。
「考えておくよ」
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2021年4月24日 1時