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「や、すまない。記憶にない記憶の話をしてしまった。さて、近況報告はこの辺にして、今日はどうしたんだい?君に限って、何の用もないということは無いだろう?」
「あっ、はい。その、実は、探してほしい本がありまして」
「ほう……お望みとあらば、どんな本でも入荷してみせるよ。どんな本だい?」
ふくろうに問いかけられ、敦はもごもごと云う。
「その、孤児院にいたときに読んだ本が、また読みたくなって。ただ、とても古い本だったことは覚えているんですけど、題名も、作者の名前も思い出せなくて……」
「構わんよ。推理みたいで面白そうだ。何より、私の後ろには特務課がいる。わからなければ放り投げて、奴らに探してもらうから」
前のめりになって、楽し気に笑いながら言う。
スケールの大きな話に、『あはは』と愛想笑いをこぼす。
「ただまあ、何もわからんのは探しようがない。何か覚えていることは無いかい?物語(ストーリー)でも、登場人物(キャラクター)でも。文章の一節でもいい」
「あ、それなら、ずっと、頭から離れない言葉があって」
「ほう……教えてくれるかい?」
敦がスッと息を吸う。
「『昔、私は、自分のした事に就いて、後悔したことは無かった。しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた』」
「それにこうもあった。『頭は間違うことがあっても、血は間違わない』……だろ?」
敦が目を見開く。
嬉しそうに、瞳の奥が輝いていた。
正面に座るふくろうは、ただ静かな瞳でどこかを見つめていた。
「知っているんですか!!!?」
「失った記憶がね。読んだことは無いが、タイトルと作者の名前はわかるよ。……入荷時期は、はっきり告げられないが、きっと入荷してみせる。君が取りに来なければ、私がここでずっと読んでキープしておくから。君以外に売るような事はしない。入荷次第、君に連絡を入れるよ。なんなら、配達(デリバリー)してもいい」
「ありがとうございます!!」
嬉しそうにする敦に、ふくろうもつられて笑みを漏らす。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年11月30日 15時