白紙の文学少女 (ページ15)

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「邪魔するぞ」

「いらっしゃい」

店に入れば、ふくろうは今日もレジカウンターの奥で本を読んでいた。

国木田のほかに客はおらず、今日も今日とて閑古鳥が鳴いている。

「やあ、国木田くんじゃないか。珍しい」

ニコニコと楽しそうに、持っていた本にしおりを挟んだ。

カウンター下からティーカップを取り出し、国木田は近くの丸椅子を引き寄せて座った。

「そうそう、最近いい方法を思いついてね。紅茶を淹れる前に、『これからいれる紅茶は飲むのに適した温度で絶対に冷めない』と言えば、冷めることは無いんだ。風味も全く変わりない。とても便利だよ。なぜ今までこの方法を思いつかなかったのか、不思議なくらいだ」

ふくろうの云う通り、カップに注がれた紅茶は湯気が立っていた。

「その万能な異能を、保温のために使うのは貴様だけだろうな」

「そうだろうね」

くつくつと笑いながら、ティーカップを国木田に差し出した。

「さてさて、この前は世話になったね。ああ、その前もかな？」

「まったく……俺の予定を乱すのは太宰の阿呆だけにしてほしいものだ」

「いやぁ、すまんすまん。私も何故か、行きたい場所になんとなく行けば、乗っていた列車がジャックされたり、敦くんがトラックに乗せられて連れ去られる瞬間だったり、海上の船が爆発する瞬間だったり……。ふむ、こうして思い返してみると、敦くんがピンチなことが多いな」

「貴様は敦の救難信号でも受け取っているのか」

国木田の言葉に、ふくろうはケラケラと笑った。

「かもしれないねぇ。それで国木田くん。まさかわざわざ、私に苦情を言いに来たわけじゃないだろう？本かい？異能かい？お菓子かい？お菓子なら、昨日とさっき暇つぶしに作ったのとあるから、持って行ってくれて構わないよ」

「菓子は後で貰って行くが、俺の目的は、そのどれでもない」

「というと？」

首をかしげながら、ふくろうは紅茶を一口飲んだ。

「社長からの命令で、貴様を勧誘しに来た」