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拓実が自転車をひいて、裏門に歩いて来た。



Aの姿を捉えると、

チラリと視線を送って、

何も言わずに歩き出した。



Aも黙って

拓実の一歩後ろを歩く。



外堀に沿った並木道が続く。



夕立のあと、

ジットリとした空気が地面から沸き起こる。



ローファーが濡れないように、

水たまりを避けて歩いた。



拓実が突然歩みを止める。



「A。」



Aが顔を上げた。

拓実は真剣な顔をしていた。



「Aって

あんな純喜くんと仲良かったっけ?」



Aはしっかりと拓実の顔を覗き込んだ。

拓実はふいっと目をそらした。



また唇が震えてる。



普段男の子とあまり話さないAが

純喜と仲良く話している。



ただの嫉妬。



別にAは拓実のものじゃない。



Aを責めるような言い方をする自分は

ダサすぎる。



それは、拓実にも分かっていた。



でも、相談スペースで相向かって

仲良く話す二人の姿を見て、

聞かずにはいられなかった。



「仲いいって。

川西くんの方が仲いいやん。」



そんな拓実の気持ちをわかっているかのように、

Aはクスクスっと笑った。



わがままをいう子どもをあやすような

優しい微笑み。



「それはそうやけど。」



「別に川西くんの河野先生をとったりせんで。」



自分が作った気まずい空気を

和やかにしようとしてくれているのが、

拓実にも分かった。



「何やそれ。」



拓実も笑った。



「A、純喜くんのこと好き?」



「好きやで。」



「そっか。」



「だって、いい先生やもん。」



聞きたいことはそうじゃない、

と拓実は言いたかったけど、

Aの笑顔を見ると、

それ以上は聞けなくなってしまった。



「俺も純喜くん、好きやわ。」



「そやんな。」







『先生として好き』だと

Aは自分に言い聞かせるように言った。



でも、声に出したことによって、

却ってその事に直面することになった。



拓実がそのような質問をするのは、

『先生として好き』ではない可能性が

拓実の目に映ったということだ。



夏の暑さがAの冷静さを

ジリジリと燃やす。



Aの中で滑らかに動いていた歯車が、

突然気まずい音を立てて、

狂い出した気がした。

理想像→←.....



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設定タグ:JO1 , 河野純喜 , 川西拓実   
作品ジャンル:恋愛
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ののん(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます!色々あれやこれや悩んで試行錯誤しながら書いておりますので、そう言っていただけると、本当に励みになります!りんさんのコメント読んで嬉しくてニヤけちゃいました笑 (2021年4月29日 1時) (レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - こんにちは。瑠姫くんの12時〜シリーズからののんさんのお話のファンになったのですが、このお話ほんっっっとに好きです、、、。本物の小説を読んでるみたいにドキドキしてしまいます。いつも素敵な物語をありがとうございます(T^T) (2021年4月28日 1時) (レス) id: a55fc0b198 (このIDを非表示/違反報告)
ののん(プロフ) - はっぱさん» コメントありがとうございます(^^)全部読んでくださったんですか?ありがとうございます(T_T)期待に添えるお話を書けるかどうか不安ですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです! (2021年3月31日 23時) (レス) id: b70c73754c (このIDを非表示/違反報告)
はっぱ - ののんさんのお話全て読ませていただきました!今回も推しの純喜くんが出るのでさらに楽しみです! (2021年3月31日 13時) (レス) id: ede0d803b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ののん | 作成日時:2021年3月28日 23時

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