※※Your Side※※ ページ43
「沙羅、フォーク、紅茶に入ってんで。」
「え！？」
沙羅が急に大きな声を出した。
「なんて言った！？」
「だから、フォーク、紅茶に…」
「ちゃう！その前！」
沙羅の勢いが増した。
「…PRODUCE101？」
「うそ…？先輩プデュ受けてるん？」
「沙羅の知ってるやつなん？」
「知ってるって…私何科やと思ってんの？
朝鮮語やで！韓国語！韓国！本家！」
「静かにして。
意味わからんねんけど。」
「そっか。日本でもやるって話題になってたけど、まさかこんなに近くに受ける人がいるとは思わんかったわ。
あんな、PRODUCE101といえば、韓国では知らん人がおらんぐらい超超超超超超超超超有名オーディション番組やねん。それの日本版！」
沙羅は感情をむき出しにすることが多いけど、こんなに興奮して話すんは久しぶりに見た。
そういえば長年愛してたK-POPアイドルが日本デビューするって言ってた時もこんな感じやったかもしれん。
そのK-POPアイドルの名前は…忘れた。
「それに受かるってやっぱり與那城先輩の歌はすごいんやなあ。」
「何を暢気なこと言うてんの。
あれ、受かったらアイドルになるんやで。」
「アイドル？歌手じゃないん？」
「歌手というか、歌だけじゃなくて、ダンスとかもやんねん。」
與那城先輩がアイドル…？
「何を笑ってんの？」
「笑ってへん。ちょっとイメージ違っただけ。」
「Aは與那城先輩が受かったらどうするん？」
「どうするって、どういう意味？」
沙羅がカモミールティーを一口飲んで、ゆっくりソーサーの上に置いた。
「アイドルなんやから…恋愛なんて出来んやろ。」
私は沙羅を見つめたままケーキを切っていた手を止めた。
「…何で？」
沙羅はため息をついた。
「Aはアイドルとか興味なかったもんなあ。
アイドルって言うのは、ファンが恋人みたいなもんやねん。」
「ファンが恋人？」
「そう。だから、他に１番がいたらあかんねん。常にファンが１番やないと。」
静かにフォークを置いた。
「はっきり言うと、
Aは與那城先輩の１番にはなれへんってこと。」
「…そうなんや。」
急に新宿の喧騒が、静かに聞こえる。
目の前に沙羅が座ってるはずやのに
真っ暗に見える。
ブルーベリーチーズケーキは味のせん鉛みたいや。
沙羅が私を励ますように何か話してたけど、
ほとんど耳には入ってこんかった。
※※
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作者名：ののん
| 作成日時：2020年5月13日 22時
