ガチデート ページ24
土曜日。
サークル練習を終え、
織田先輩が何故か沙羅ちゃんと肩を組んで、鼻唄を歌いながら、彼女の住む学生寮の方へ消えていった。
俺も一度家に帰って、支度した。
今日は７月に入っているというのに、天気が悪くて気温が上がらず、冷えていた。
クローゼットからブラックのＭＡ−１を取り出してはおった。
雨の日用のデートプランも作っておいて良かった。
洗面台の前で、ヘアワックスで軽めのスタイリングをしながら、そんなことを考える。
１５時まであと３０分もある。
彼女の寮までは２０分ぐらいだから、彼女の寮の前で待つか。
家を出ると、小雨が降っていて、緑の木々を隠すように靄がかかっている。
黒い骨組みの大きなビニール傘を開いて、あるき出す。
彼女はどんなスタイルで来るんだろう。
いつもは大体パーカーやTシャツに短パン、スニーカーという如何にもシンプルな服装しかしないし、
化粧をしているのもほとんど見たことがない。
俺の服装も…大丈夫かな？
彼女がいつも通りでも、おめかししてても合うように服は選んだつもりでいたけど…
振り向いて道沿いの小さな喫茶店のガラスに映る自分を確認する。
やっぱり、中はグレーじゃなくて、白の方がよかったかな。
あー、なんか女子みたいだな。
緊張する。
寮に着くと、休みだからか人影はなく、シンと静まり返った広場に、ポツポツと雨の弾く音が響いていた。
携帯の時計は１５時５分前を指している。
彼女はまだ来ない。
長いようで短い５分間。
時計が１５時ちょうどを指すと、
電話がなった。
彼女からだ。
「もしもし。
もう着いてるよ。」
『すみません。
あ、あと５分で出ます。』
「Aちゃんの方が遅いの珍しいね。
織田先輩はもう帰ったの？」
『３０分前に帰られました。
化粧と髪のセットをして頂いたのですが…あと洋服も選んで頂いて…ただ少し問題があって…』
「問題？」
「後ほどお話します。
今、部屋を出ます。」
ガチャリとドアを開けるような音がしてブチッと電話が切られた。
エレベーターが降りて来るのが見えて、
程なくして、正面の玄関ドアが開いて人影が見えた。
おそらく彼女だろう。
靄がかかっていて、見えにくい。
俺も彼女の方へ歩いていく。
彼女が俺に気がついて小さく手を振った。
でも俺は彼女の姿が見えたのに、彼女がホントに彼女なのか判断がつかなかった。
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作者名：ののん
| 作成日時：2020年5月13日 22時
