報告 ページ1
俺と純喜が食堂で席を探してると、
「與那城先輩！純喜先輩！」
と俺たちを呼ぶ声がした。
沙羅ちゃんだ。
食堂のテラス側に座って大きく手を振っている。
隣には彼女もいる。
「おー！お二人さん！
お昼買っていくから、２つ席空けといてー！」
純喜の声は、本当に大きい。
食堂の９割ぐらいが純喜の声に反応して、振り返った。
「わかりましたー！」
俺と純喜はそれぞれお昼を買って、沙羅ちゃんと彼女の前に座った。
純喜が隣でハヤシライスをおいしそうにパクパク食べている。
そういえば純喜には彼女のこと、全然話してなかったな。
どうせ今後知ることになるだろうし、伝えておこうかな。
「純喜。報告があるんだけどさ。」
「なんふか？」
『報告』という言葉に沙羅ちゃんが反応して、我慢できずにニヤニヤしている。
「実は、俺とAちゃん付き合い始めたんだ。」
「まじっふか！？」
純喜の爆声でまた食堂の９．５割の学生がこっちを振り向いた。
「声が大きいです。」
彼女があから様にイラついた顔をした。
「え〜うわ〜おめでとうございますー！沙羅ちゃん知ってた？」
「知ってました。Aに当日に聞きましたもん。」
「まじかぁ〜。いや、めっちゃ嬉しいっすよ。ほんま奨くん、Aちゃんのことめっちゃ好きでしたもんね。」
「まあ、うん。そうだね。」
俺は照れながら返事をした。
彼女は俺の言葉を聞いて、少し微笑んだ。
「え？今、Aちゃん、笑わんかった？
Aちゃん笑うん！？
笑ったらめっちゃ可愛いやん！！」
純喜が彼女を指差して、また騒ぎ出した。
純喜から彼女に対して『可愛い』という言葉が出て、彼女の笑顔を純喜に見せるのが惜しくなった。俺は思わず彼女の顔を手のひらで隠した。
「純喜は見ちゃダメ。」
「なんでなんすか。奨くんだけずるい。もう１回見せてえやー！」
「純喜がAちゃんのこと好きになったら困るじゃん。」
沙羅ちゃんが横から『ふ〜』とはやし立てた。
俺は自分で言って自分で恥ずかしくなった。
「はあー。めっちゃのろけるやん。奨くんがめっちゃのろけるって広めたるわ。」
「絶対やめてください。」
彼女が俺の手のひら越しに、釘を刺した。
手をどけると、彼女はまたムスッとした表情に戻っていた。
「あーあー、純喜先輩が怒らせましたよ？」
沙羅ちゃんが笑った。
「…俺のせいなん？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 196人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ののん
| 作成日時：2020年5月13日 22時
