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太宰の未来での友人との出会い 二 ページ38

Aは、今日のお昼頃から始まった男と猫の戦いの全貌を聞いた。
 曰く、男の姿を目撃した瞬間に一目散に逃げ出すのだと。其れだけではなく、男がギリギリまで近づいて来たタイミングで逃げ出す事もあったそうだ。
 ショッピングモール辺りでの遭遇四回。
 路地裏での遭遇七回。

 「そうこうしている内に、猫はこの高校の敷地内に入り込んであの木の枝に登った、と云う訳だ」
 なんか遊ばれてない? と云うより、舐められてない?
「……先程から此方を見下ろして来る奴の顔が、妙に太々しくてな。もしかすると、俺はあの猫に舐められているんじゃないだろうか」
「…………」
 何処か悲壮感が漂い始めた男に、Aは何も云えなかった。



 「今がチャンスでは?」
「いや、高校の敷地内に勝手に入り込むのは不味いだろう。其れに、他にも問題はあってな」
 「問題?」と首を傾げたAに対して、男は徐に足を一歩踏み出して見せた。
 いきなり如何したのだ、と困惑していたAだが、木の枝辺りから聞こえた微かな鈴の音で目線を猫へと向けた。
 ──成程ねぇ。
 Aは理解した。猫が、今にも逃げ出さんと四つ足で立って此方の様子を伺っているのだ。大変太々しい表情で。
「貴方が一歩でも動こうとすれば、猫が逃げようとする訳ですね」
「あぁ」
 男が歩くそぶりをこれ以上見せないからか、猫は再び寛ぎ始めた。

 「其れじゃあ私が代わりに行って来ますよ」
「……すまないな」
 其れに構わないと云いながらAも一歩を踏み出したが、何処からともなく鈴の音が聞こえた。
 木の枝を見上げれば、矢張り猫が四つ足で立って此方を見ている。余裕たっぷりな、太々しい表情で。
「成程、私の事も舐めてる訳だ」
「『も』? 矢張り俺は、あの猫に舐められていたのか」
 何処か論点がズレている男を放って、Aはじっと猫を見つめた。



 「君、此方に降りて来なさい。此れは命令です」
 男はほんの少しだけ目を見開いてAをみた。
「話して判る相手じゃ──」
 しかし其の後、俄には信じがたい事が起こった。鈴の音がしたと思ったら、猫が素直にAの足元へ降りて来たのだ。
 Aは猫を抱き上げると、男にそっと手渡す。
「帰るまでじっとしてなきゃダメだよ」
 猫は呑気に返事をした。
 
 「驚いた。猫と会話ができるのか」
「……そんな訳無いじゃないですか」
 此れが、後に太宰の友人となる男との出会いだった。

パーティの準備→←太宰の未来での友人との出会い 一



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息抜き(プロフ) - 黒猫さん» 結果主人公の心情優先で書いて、場面を飛ばし飛ばしにしてた箇所もあったのですが、上手く伝わっていた様で良かったです……。続編も更新頑張りますね! コメント有難う御座いました! (2022年12月25日 23時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 初めてのコメント失礼します!読みました!すごく面白かったです。文ストを見ていてチェンソーマンは少ししか見てないのですが、それでも場面の情景が鮮明に想像できました。毎日読みたいくらいハマりました!十五歳編完結おめでとうございます。更新頑張ってください! (2022年12月25日 21時) (レス) @page50 id: 68362437f9 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 温泉煮卵!さん» 有難う御座います! 十六歳編、色々と準備してる段階なので気長にお待ちください……。 (2022年12月25日 10時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
温泉煮卵!(プロフ) - 十五歳編完結おめでとうございます、十六歳編の更新も待ってます!蘇生のシーンとか、特に楽しみです…! (2022年12月25日 0時) (レス) id: 61be09a0bb (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - えむさん» コメント有難う御座います! 頑張りますね! (2022年12月6日 2時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:息抜き | 作成日時:2022年11月3日 3時

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