【文スト】平穏な暮らしを望みます 〜十五歳編〜

《羊》の構成員 ページ34

却説、せっかく電子遊戯場に来ているのにトイレで時間を潰してしまうのはもったいない事だ。Aは先程の格闘遊戯コーナーからは死角になって見えない処で存分に他の遊戯を楽しんでから、太宰達の処へと戻る事にした。

＊

　そろそろ勝負も終わっただろう頃合いを見計らって、Aは太宰と中也の元へと戻った。
　ふと、見覚えのない三人組が視界に入る。其々が、中也と同じく右手首に青い細帯を巻いていた。
「──、────、異能の手札の責任を果たしてくれよな、中也！」
　近づくにつれて、彼らの会話がAに鮮明に聞こえてくる。
　成程、彼らが《羊》とか云う組織の構成員の子達か……そんで持って、
「《羊》が如何云う組織かと思えば、中原君の異能に頼りきりと云っても過言ではない組織なんですね」
「Aちゃん、大せいかーい」
　太宰の声に、全員が一斉にAの方を振り向いた。
　確かに、重力操作の異能は凄かった。
　今日見た中也の戦闘を思い返しながら、Aは深々と頷いたのだ。

＊

　其処からは怒涛の展開だった。太宰が森に掛け合って《羊》の捕虜達を解放。人質が解放されたから、と中也を伴って武闘派組織『黒蜥蜴』への報復に行こうとする銀髪の少年。しかし其れを断る中也。
「中也君は自分の異能をどう使うのか、自分で決められる。君達のお守りをするより大事なことが見つかったんだ。祝福してあげないと」
　太宰が中也に詰め寄る銀髪の少年を見ながらそう云った。Aには其れが、《羊》達へ中也への不信感を植え付けている様にしか見えなかったが、何も云わずに其れを見守っていた。

＊

　「君達も考えた方が佳いよ。このまま中原君に依存してちゃ、何時かは組織が壊滅します」
　中也に対して責任を考えた方が佳いと云って立ち去ろうとした《羊》達に、Aはそう云った。
　もっとも、忠告したところで意味はない。中也は今は《羊》でも、数年後にはポートマフィアの幹部だ。それが指し示す事が判らない程、Aは鈍くない。

　ふと、其の言葉を聞いて銀髪の少年が立ち止まった。そして其の儘ポケットから何かを取り出して、Aの元まで歩いてきた。
　其れはナイフだった。

納得、そして愉悦部員と救世主→←電子遊戯場にて

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