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柳原先輩は妖艶な笑みを絶やさずに木の向こう側に全神経を集中させている様だった。
彼女の圧倒的余裕に、拳に僅かに力が入る。




…………あれ?何に対して?




自分の中で生まれた謎の感情に疑問を抱いていると、赤司君が口を開いた様だ、先程迄鳴いていた虫達も一斉に音を消し彼の声だけが残る。





「すまないが、僕は君と付き合えない」


「…………理由を、聞いても良い、かな」





はっきりとした拒絶に、彼女はショックを受けながらも内心何処かで分かっていたのだと思う。痞えているけれど、精一杯続きを紡いでいる。

赤司君は、何て答えるのだろう。

盗み聞きなどという卑劣な行為を行っているのに、其の背徳感からかどきどきと心臓が鳴り止まない。




「今恋愛をしている暇が無くてね。申し訳ないが、君を恋愛対象としても見れない」





今度こそ、相手の希望は絶たれ、心は砕き切った。
何故だか自分の心にまで罅が入った様だ。無情な言葉に何処かで傷付く自分が居る事を、此の時は気付けなかった。

ごめんなさい、と涙目で其の場を走り去る彼女と、暫く立ち止まってからゆっくりと体育館へと戻る赤司君。

初めてはっきりと姿が見えた女子生徒は確か隣のクラスのマドンナだ。




虫達が再び鳴き声を上げ、満天の星空の下残されたのは柳原先輩と私の二人。




彼女は木の反対側に向けていた視線をようやく外し、私の目を見てにこりと口角を上げた。




「初めまして、柳原夕実です」

「初めまして、南Aです。校内新聞拝見しました。先日は大会での御活躍御目出度う御座います」




奇妙な雰囲気のまま、双方が社交的な挨拶を交わす。

あら有難う、準優勝なのに恥ずかしい、と彼女は愛想笑いを貼り付けたまま。

対抗する様に、私も穏やかな表情を浮かべ内心を隠す。




お互いにこにこと見つめ合う不穏な空気が漂った後、先に口を開いたのは柳原先輩。







「実はね、私も彼に振られたの」







不意をついた彼女の告白に、肩がびくっと跳ね上がった。

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nome(プロフ) - あまねさん» 返信大幅に遅れて申し訳ありません。楽しみにして頂けてとても嬉しいです!更新はのんびりとお待ち下さいm(__)m (2018年3月18日 11時) (レス) id: 981a85eb0c (このIDを非表示/違反報告)
あまね - この作品大好きです(*^^*)更新を楽しみに待っています!! (2017年5月7日 19時) (携帯から) (レス) id: 743e4dcd22 (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - みずあいすさん» そうなんですね!仲間だと知れて心強いです(`・ω・´)私は行きたい大学がありまして、かなり難関なので気合いを入れたくて(笑)お互い頑張りましょう〜!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - こうちゃさん» 繊細……!勿体無いお言葉です、有難う御座います!何時もコメントに励まされておりますm(_ _)mお待ち頂ける事が最大限の励みです……!受験勉強に精一杯挑んで、戻って参ります!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
みずあいす - 私も来年受験生です。辛い……。勉強とか考えてなかったので、正直現実を叩き付けられました、ありがとうございます。幸せなエンドを迎えられることを祈って!頑張ってください! (2017年4月5日 21時) (レス) id: 94c5760bdb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:nome | 作成日時:2016年8月8日 16時

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