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ぴくり、と眉が反応する。
穏やかだった彼の顔が強張ったのを見て私は慌てて口を噤む。
失言だった。
一変した鋭い眼光は、失望の色に染まっていた。_______否、私が、染めてしまった。
「誰に向かって言っている」
放たれた言葉は酷く冷たかった。全身の毛が一瞬で凍りつき、間抜けにも開いたままの唇がわなわなと震える。
呻き声すら出なくて、私は何も出来ず立ち尽くす事しか出来なかった。
無様な姿だっただろう。
足は力の入れ方を忘れ、重心が定まらない。上手く立っていられただけでも奇跡だ。
赤司君はきっと、私に期待していたのだと思う。
洛山バスケ部の精神面でのサポートは勿論、中学時代の旧友との仲介役。完璧な彼には少しも及ばないけれど、自分なりに精一杯マネージャーとクラスメイトの枠内で業務を果たして来たつもりだ。
はぐらかす事はあれど嘘をつかない彼に『必要』とまで言われ、舞い上がったりもしたが慢心せず今日まで過ごした。
私なら、過度な干渉も無く都合良く動いてくれるだろうと。
赤司君は、何処か人を駒の様に扱う節がある。彼の正義を遂行する為に必要な道具であるかの様に。
あまり表立ってそういう本心は見せないから、従う人々は気付いて無いかもしれないけれど。彼の人間性は、其れ抜きでも心から従いたいと思える程魅力的だから。
私だって同じで、例え使い捨てられたって構わない覚悟で此処に立っている。彼に着いていくと決めたのは自分自身で、絶対に後悔はしない。
______________けれど。
見下ろされた瞳に映る自分はこの上なく情けなくて、彼との間に一瞬で壁が出来上がってしまった。折角今まで側に居させてくれたのに、私は其の権利を自ら捨てたのと同じ行為を犯した。
物理的には近くに居る筈なのに、向こう側へと追いやられた私は遥か遠くから赤司君を見つめる事しか許されない。
沈黙に耐えきれず、軽はずみな発言に対して謝罪をしようとも試みるも口は固く閉ざされたままだった。
情けない。恥ずかしい。御免なさい。
反省と羞恥の感情が頭をぐるぐると駆け巡る。思考はどんどん落ち込んで最悪のパターンしか考えられなかった。
赤司君に嫌われて、絶交されて、二度と会えなくて______________
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nome(プロフ) - あまねさん» 返信大幅に遅れて申し訳ありません。楽しみにして頂けてとても嬉しいです!更新はのんびりとお待ち下さいm(__)m (2018年3月18日 11時) (レス) id: 981a85eb0c (このIDを非表示/違反報告)
あまね - この作品大好きです(*^^*)更新を楽しみに待っています!! (2017年5月7日 19時) (携帯から) (レス) id: 743e4dcd22 (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - みずあいすさん» そうなんですね!仲間だと知れて心強いです(`・ω・´)私は行きたい大学がありまして、かなり難関なので気合いを入れたくて(笑)お互い頑張りましょう〜!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - こうちゃさん» 繊細……!勿体無いお言葉です、有難う御座います!何時もコメントに励まされておりますm(_ _)mお待ち頂ける事が最大限の励みです……!受験勉強に精一杯挑んで、戻って参ります!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
みずあいす - 私も来年受験生です。辛い……。勉強とか考えてなかったので、正直現実を叩き付けられました、ありがとうございます。幸せなエンドを迎えられることを祈って!頑張ってください! (2017年4月5日 21時) (レス) id: 94c5760bdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nome | 作成日時:2016年8月8日 16時