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「…………っ、やったやった、赤司君!」
ぱたぱたと慌ただしく此方に向かって来た南の顔には、喜びの感情がこれでもかと表現されていた。
マネージャーの仕事や普段の学校生活では滅多に見せない無邪気な笑顔は、彼女が手に持つスマホと共に僕の顔の目の前に迫って来る。
どうしたんだい、と問い掛ける前に顔面に示されたのはバスケの対戦表。ウィンターカップ東京枠決勝のものだった。
其処に名を連ねた『秀徳』と_______『誠凛』の文字。
「私達が唯一使える時間に彼等の試合がぴったり合わさる何て、最早必然に近いんじゃないかな」
きらきらと輝いている彼女のあどけない表情に、無意識の内に眉尻が下がる。ぴりぴりと張り詰めていた部長会を終え、部室に帰って一番に目にする其の微笑みに、思わず口角が上がった。
「へぇ、良かったね」
「…………あれ、赤司君分かってた?」
「さぁね」
意味有りげな呟きをくすりと漏らし、目を伏せて南へと手を伸ばす。其れに気付いた南は無条件に机の上に載ったファイルを渡した。資料をぺらりと捲りながら、素早く目を通す。
「修学旅行中の段取り」
「樋口先輩を中心に、各学年の代表と確認を終えました。監督にも概要を伝達済みです」
「三軍の調整」
「本日五時に変更届けを提出して頂く手筈となっております」
数文字のキーワードだけで、南は的確に聞きたい事を汲み取り状況を述べる。
彼女がマネージャーとして振る舞う時はワントーン落ち着いた声で、表情も真面目な其れに一変する。仕事の時だけ敬語で話すのは、立場を弁えている彼女なりの気遣いだろう。
他にも幾つかチェックを終え、確認を済ませる。御苦労と声を掛けた後、南はにこりと口元に笑みを浮かべ其れでは後程、とだけ言い残し部屋を出て行く。
明日からの修学旅行で、南と同じ自由行動班になれたのは幸いだった。彼女の他にも、くじで男女のグループを合わせた筈なのに見事にバスケ好きが集まり、皆決勝リーグの見学を二つ返事で承諾したのだ。
久しぶりに、旧友のプレイが見られる。
自身の胸が、僅かながら高揚しているのを感じる。らしくないと分かって居ながらも、心の奥底からふつふつと興奮が湧き上がって来ていた。
洛山のウィンターカップ出場は既に決まっている。桐皇、海常、そして陽泉も決定した。
後、二人。
さぁ、待っているから、早く来るんだ。
楽しみにしてるよ、真太郎_______そして、テツヤ。
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nome(プロフ) - あまねさん» 返信大幅に遅れて申し訳ありません。楽しみにして頂けてとても嬉しいです!更新はのんびりとお待ち下さいm(__)m (2018年3月18日 11時) (レス) id: 981a85eb0c (このIDを非表示/違反報告)
あまね - この作品大好きです(*^^*)更新を楽しみに待っています!! (2017年5月7日 19時) (携帯から) (レス) id: 743e4dcd22 (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - みずあいすさん» そうなんですね!仲間だと知れて心強いです(`・ω・´)私は行きたい大学がありまして、かなり難関なので気合いを入れたくて(笑)お互い頑張りましょう〜!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - こうちゃさん» 繊細……!勿体無いお言葉です、有難う御座います!何時もコメントに励まされておりますm(_ _)mお待ち頂ける事が最大限の励みです……!受験勉強に精一杯挑んで、戻って参ります!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
みずあいす - 私も来年受験生です。辛い……。勉強とか考えてなかったので、正直現実を叩き付けられました、ありがとうございます。幸せなエンドを迎えられることを祈って!頑張ってください! (2017年4月5日 21時) (レス) id: 94c5760bdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nome | 作成日時:2016年8月8日 16時