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彼女が頭を抑えながら呪文の様に言葉を吐き出すのを制して、きょとんと丸まった瞳を覗き込む。今から他の代理探そう、と笑って私は立ち上がった。ぱんぱんとスカートをはらう姿に、みやちゃんはふざけないでと顔を歪めた。
「そんな、夕実先輩の代わりが熟せる都合の良い人居る訳無いじゃない!!」
ガタッと音を立て、彼女は荒々しく立ち上がる。見た事の無い形相に驚くも、彼女の悲痛な叫びは続いた。
「あの人は世界レベルなの!私は夕実先輩に比べ物に成らない位劣ってて、どんなに努力したって届く筈も無くて!」
下を俯きながら、みやちゃんの叫びは迫力を増す。
「其れなのに、Aに此の気持ちが分かる訳無いじゃない!!何時も笑ってて楽しそうで!!何でも知った顔して実際熟知してて!メンタルトレーニングだって大層な名前して本当は只の気休めにしか_______」
「みやちゃん」
しんっ_______っと一瞬で空気に音は消えた。
はっと我に返ったみやちゃんが申し訳無さそうに表情を曇らせ、直後ばっと頭を下げる。
「ごめ、ん言い過ぎた……!Aは凄いの知ってるのに、私……!」
顔を上げて、と側に寄り彼女の肩を持った。どう詫びれば、と口元をもごもごとする様子では、とても午後の舞台に上がれそうも無い。
「私の話より、今は目の前の問題を解決する方が先だよ」
脱線しつつあったみやちゃんの心配と嘆きを急いで軌道修正して、彼女の目を真っ直ぐ見つめる。
熱くならないように、飽くまでも冷静に且つ時間も無いので迅速に言葉を探す。
「みやちゃんは、代理を他の人にやって欲しいの?」
「そ、れは……」
嫌だ、と口より先に彼女の表情が告げる。
言葉に詰まり力が入った手を優しく包んで、ゆっくり待つ。徐々に上がる決意の篭った表情と、やっと漏れた本心。
「………………私が、やりたい」
自分に出来るか分からないけど、不安の方が大きいけど、他の人がやるのはもっと嫌だ。
尊敬している先輩の代わりになれる何て、大それた思い込みはしない。
完璧に熟せる訳無い。
けど、そんな話今する暇何て無い。
ただ、私がやるんだ。
みやちゃんは落ち着きを取り戻し、話して行く内に今するべき事も定まった様だ。真っ直ぐ私を見つめ返す瞳には、もう迷いは無かった。
私は満足気ににこりと笑って、名案が有ると扉の方へ歩き出した。
強力な助っ人を知っているんだ、と呟いて。
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nome(プロフ) - あまねさん» 返信大幅に遅れて申し訳ありません。楽しみにして頂けてとても嬉しいです!更新はのんびりとお待ち下さいm(__)m (2018年3月18日 11時) (レス) id: 981a85eb0c (このIDを非表示/違反報告)
あまね - この作品大好きです(*^^*)更新を楽しみに待っています!! (2017年5月7日 19時) (携帯から) (レス) id: 743e4dcd22 (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - みずあいすさん» そうなんですね!仲間だと知れて心強いです(`・ω・´)私は行きたい大学がありまして、かなり難関なので気合いを入れたくて(笑)お互い頑張りましょう〜!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - こうちゃさん» 繊細……!勿体無いお言葉です、有難う御座います!何時もコメントに励まされておりますm(_ _)mお待ち頂ける事が最大限の励みです……!受験勉強に精一杯挑んで、戻って参ります!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
みずあいす - 私も来年受験生です。辛い……。勉強とか考えてなかったので、正直現実を叩き付けられました、ありがとうございます。幸せなエンドを迎えられることを祈って!頑張ってください! (2017年4月5日 21時) (レス) id: 94c5760bdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nome | 作成日時:2016年8月8日 16時