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葉山先輩の少しだけ落ち着いた声に反応して、お茶の入ったコップをテーブルに置く。
「柳原先輩ですか?」
「そう!最近しょっちゅう差し入れしてくる赤司に惚れてる子!」
そう言う認識なのか、と新発見。あれめっちゃ美味いんだよねーと無邪気に笑う彼に、実渕先輩が息を吐く。
「馬鹿ね、あの子はオーケストラ部よ。文化祭何て文化部最大の見せ場じゃない」
「そうですね、公演が午前中一杯だったと思います」
ふーん、と首を傾げる彼は、直ぐ興味無さそうに黛先輩へと向き合った。
「あ!言うの忘れてた!!黛サン!!」
ぎくり、と黛先輩が立ち上がろうとした腰を再び下ろす。食べ終わって退出しようとした所を目敏く見つけられたらしい。
「…………何」
「あん時!マジナイスパスだった!!」
彼の冷め切った瞳にも一切めげず、葉山先輩は至極楽しそうににかっと笑う。
同意します、と私も釣られて顔を綻ばせる。
黛先輩はちらっと視線を向け、直後立ち上がる。にこにこする私達四人を置いて、一言も発さず背を向け教室を出て行った。
「其れにしても、Aちゃん」
「?はい」
私もそろそろお暇しようと、先輩達に声を掛けようとした瞬間、実渕先輩に招かれる。どうしたのだろうか、と側に寄ると、小声で囁かれた。
「………………良いの?柳原さんの事」
「………………はい?」
私の素っ頓狂な反応に彼は目をぱちくりと瞬かせ呆れた様に息を吐く。実渕先輩は納得し難い顔で、Aちゃんが良いなら良いのだけれど、と呟いて微笑んだ。
実渕先輩の不安げな表情に疑問を抱いたまま、其の後残る彼等と別れ自分の教室に戻る。思考を巡らせながら辿り着くと黛先輩が一人扉の前で立っていた。
「黛先輩!」
どうされたのですか、と慌てて駆け寄ると相変わらず表情を変えないまま彼は私を軽く見下ろす。
真っ直ぐ、瞳の奥まで見透かされている様な感覚に少しどきっとする。
彼は何も言わない。私も口を開かない。
騒がしい空間の中、切り取られた静けさで二人きり見つめ合う。
少し睨み付ける様に眉を顰めた彼が口を開いたのは長いようで一瞬の沈黙の後。
「本調子じゃ無いなら、無理すんな馬鹿が」
しっかりと発せられた叱咤は、私の硬直した心にぐさりと突き刺さった。
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nome(プロフ) - あまねさん» 返信大幅に遅れて申し訳ありません。楽しみにして頂けてとても嬉しいです!更新はのんびりとお待ち下さいm(__)m (2018年3月18日 11時) (レス) id: 981a85eb0c (このIDを非表示/違反報告)
あまね - この作品大好きです(*^^*)更新を楽しみに待っています!! (2017年5月7日 19時) (携帯から) (レス) id: 743e4dcd22 (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - みずあいすさん» そうなんですね!仲間だと知れて心強いです(`・ω・´)私は行きたい大学がありまして、かなり難関なので気合いを入れたくて(笑)お互い頑張りましょう〜!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
nome(プロフ) - こうちゃさん» 繊細……!勿体無いお言葉です、有難う御座います!何時もコメントに励まされておりますm(_ _)mお待ち頂ける事が最大限の励みです……!受験勉強に精一杯挑んで、戻って参ります!! (2017年4月6日 20時) (レス) id: 1efffa79be (このIDを非表示/違反報告)
みずあいす - 私も来年受験生です。辛い……。勉強とか考えてなかったので、正直現実を叩き付けられました、ありがとうございます。幸せなエンドを迎えられることを祈って!頑張ってください! (2017年4月5日 21時) (レス) id: 94c5760bdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nome | 作成日時:2016年8月8日 16時