合鍵 ページ8
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店を出て，マンションまでの帰り道を歩く
お互いにちょっと酔っ払いで
歩くと時折触れる腕と肩
すると
深夜営業をしているスーパーの前で足を止めたAが
「ね，朝食はどうしてるの？」と訊いた
「んー，コーヒー飲むくらいかな」
「仕事中お腹すかないの？」
「朝コンビニでなんか買ってく」
「もう…体に悪いよ？」
眉毛を下げ心配そうにする顔は，朋子おばさんによく似てきた
「ね，朝ごはんくらい作ってもいい？ 泊めてもらってるお礼に」
「いや，そんな気ぃ遣わなくていいんだけど……
でも，Aだってなんも食べるものないと困るか」
結局ふたりであれやこれや買い込んで
両手いっぱいの荷物を抱えて帰宅した
うちの冷蔵庫がこんなに充実してんの
引っ越してきて以来 初めてかもしれない
けど，そんなこと言ったら哀れみの目で見られそうで黙っておいた
順番にシャワーを浴びるのも
部屋着に着替えた彼女におやすみを言うのも
そわそわしちゃって落ち着かない
なんだか浮き足立ったまま眠った翌朝は
我が家のものとは思えない
良いニオイとともに目が覚めた
「あ，翔くん！ おはよう」
「ん……おはよ」
「ふふ，すごい顔」
「え？…なにが？」
「そういえば，翔くんて朝は少し残念なんだった」
「あはっ，なんだよソレ」
「懐かしいなぁ。
あ，ほら。顔洗ってきて？ご飯食べよ」
なんだこの，恋人みたいな甘い会話は
すこしムズムズしちゃうけど
決して不快な気持ちではない
「Aは今日はどうすんの？」
「まだ時差ぼけもあるしね…
すこしのんびりしてから買い物行こうかなって。
翔くんは？」
良い香りのするコーヒーを啜り，トーストを齧る
「んー，ちょっと病院顔出して…」
「日曜も仕事なんだね。大変…」
「いや，今ちょっと心配な患者がいてさ。
そのままジム寄ってくるから夕方まで帰らねぇから」
あ，そうか！と思い出して
「これ，持っといて」
Aに合鍵を渡した
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