順序 ページ35
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ボストンでは有名な，シーフードの店。
すごく堅苦しい高級店，て訳じゃなさそうなんだけど，
地元でも観光客にも人気らしく予約困難だって聞いた。
案の定，店の名前を告げるとAのテンション爆増。
「ほんと？嬉しい？行きたかったんだよねー！
でも絶対に予約取れないと思った！」
珍しく饒舌なAを見て，内心不安だった気持ちがひとまず安堵する。
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生牡蠣，クラムチャウダー
そして何より楽しみにしてた，特大ロブスター。
素手で豪快に皮を剥き，2人して大きな口でかぶりつく。
たくさん飲んで，たくさん笑って
すげぇベタなんだけど幸せだなーって思った。
この年になって，素の自分をさらけ出せる相手って
まあ貴重だよね。
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そんなひとと一生を共にできるか，一生手放してしまうのか
今夜で決まってしまうと思うと
緊張で口から心臓が出てきそう
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「翔くんのおかげで素敵な夏休みになった。ありがとね。
終わっちゃうのが残念なくらい」
頬を赤く染めたAの，黒い瞳が潤んでいる。
「もうちょっと休んでてもいいんじゃねーの？」
「まあでも，貯金も減る一方だしね，
日本に帰ったらさすがに仕事探そうと思ってる」
「もう海外勤務する気はないの？」
「んー。まあいい仕事があればだけど」
「たとえばさ，ボストンで働くとか」
「え？」
「まあしばらく仕事しなくても、俺もそれなりに甲斐性あると思うし」
急にAが，訝しげに眉をひそめた
「ねえ翔くん，
……なんの話してる？」
えっと，
俺，今なんつったけ？
ふーっと大きく息をはいたAが言った
「わかった，翔くん。
それ私、きっとノーって言わないやつだから…」
え？ まじで？
「でもね、ちょっと言ってる意味がハッキリしないから
もう少しわかりやすく話してくれる？」
あーそうだった
Aは昔からこういうヤツだった。
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「ごめん、確かに話の順序がおかしかった」
俺もワイングラスを置いて深呼吸。
おかしいな、二人ですでにボトル２本近く空けてるのに
まったく酔った気がしねー
「結婚してください」
深々と頭をさげてから顔をあげたら
目をまん丸に見開いたAが
「…は？」
と言った。
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