友の助言 ページ29
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「でもさ？ 好きじゃなきゃそんなこと言わないんじゃない？」
「え？」
「股のゆるーい子ってワケじゃないんでしょ？」
ブルブル，と高速で首を横に振る
「んは，じゃさ。やっぱ翔ちゃんのこと好きなんじゃねーの？
じゃなきゃ，そんなこと頼まねーって」
ニコニコと笑う智くんの顔が，まじで仏に見えて来た
「そーかな」
「だいたいさ，久しぶりに会って好きんなって，とか
ぜってぇそれ，嘘だべ翔ちゃん。ほんとはずっと好きだったんでしょ？」
「…うっ」
「めんどっちーやつだなぁ。ホントに。
こーんないい男なんだからもっと自信持てよぉ」
「がんばります…」
「あー腹いっぱい。昼寝しよ」
っていう智くんを家まで送り届けて，家路を走る
「この勢いで言ってしまえよ」と囁く脳内の小悪魔を
「まあ待て，落ち着け」となだめる天使
勝手にそんな構図を戦わせつつハンドルを握っていたら
あっという間に家についてしまった。
A いるかな？どんな顔して会えばいい？と
もじもじ玄関前で思い悩んでいると
突如 内側からガシャっとドアがひらいて，びっくりして後ずさった。
「あ，翔くんおかえりー」
驚くほどいつもどおりのAに少し拍子抜け。
いや，朝もそうだったっけ。
「ただいま。え，どっか出かけんの？」
「うん，急に高校の同級生に呼び出されて。夕飯も食べてくるね」
男か？！と一瞬焦りを覚えるも，いやこいつは女子高だった…と胸を撫で下ろし
つーか，恋心を自覚した途端，急に忙しいのな！俺のハートは！
「大丈夫？帰り迎えに行く？」
「平気だよー。も，心配性だなー翔くんは」
あは，と笑って「行って来まーす！」と手を振るAの背中を見送る
「心配」の意味が違って来てんだよな，もはや。
なーんてこと，彼女はもちろん知る由もなくて
今夜のAの不在を寂しく思う気持ちと裏腹に
決着が先延ばしになったことを
心のどこかでホッとしていた
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