大切な人 ページ21
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翌，土曜も仕事があった
こんな時に間が悪りぃなと思いつつ
夕方には帰ることを書き置きして
後ろ髪引かれる思いで家を出た。
ひと通り病棟を回り，担当患者も落ち着いてるし
今日はもう帰ろうかなと思った時，廊下で大倉に会った
「あ，翔さん。昨日の話，大丈夫やったんですか？」
「えっと，ごめん。なんの話だっけ？」
「ほら，友達がアッペかもって。万が一の時は頼むわ，って言うてたやないですか」
「あ！ごめん！…うん，大丈夫そうだった。悪い，心配かけて」
「いや，いいんすけど。
……てか，あれ，友達って言うの嘘でしょ」
「……え？」
「だって翔さん，すげー必死な顔してたから」
「ちょ，嘘だろ」
「え，自覚ないんすか？(笑)」
「……」
あはは，って笑った大倉が，ちょっと真面目な顔になった
「もしその人が女なら，大事にした方がいいっすよ。
翔さん自覚してないかもだけど，すげー大切な人なんでしょ。」
「まじ？」
「マジっす，マジっす。
つーか，いい加減身を固めないと。いつまでも伊達の指輪で虫は避けれませんよ」
ちょうどそこで大倉のPHSが鳴り，じゃ，と言うように手を上げて歩き出す
その後ろ姿を目で追いながらため息をついた
そりゃさ。俺だって知ってんの。
Aが大切な存在だってことは。
どういう意味でか，ってことに関しては，まだ議論の余地があるにせよ。
多少の恋心が混じってることも否定しない。
でもさ。
それに気づいた途端に突きつけられた現実の厳しさね？
Aは，恋愛なんてこりごりと言っていた。
もしかしたら，男って存在そのものがダメなのかも。
……あれ？
つーか，俺も男じゃね？
……なんで俺の家なら平気で泊まれんのよ。
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