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「だ、大丈夫なのこの人……!」
「こいつ……息はしているな」
「子猫ちゃん、とにかく今は休ませてあげましょう。目が覚めたときのために飲むものを用意しておくわ」
「ありがとうございます……」
ベトの力を借り、どうにかその男をソファに横たわらせた。
ホームレスよりもひどい状態のその男を引き摺ると、床が黒く汚れていく。
ああまた掃除か、と落ち込むよりも先に、歌苗はこの男の安否が心配だった。
「……ん……」
「っ! 起きたぞ!」
「あの、だ、大丈夫ですか!? 話せますか!?」
ゆっくりとその男は目を開けた。
あわてて歌苗が話しかけると、どうにか歌苗の方を向いてくれる。
彼のグレーの瞳はどこか、普通の人間とは違った何かを思わせた。
「……ここは……」
「音羽館です。私の家……おばあちゃんの代から受け継いでいる館で」
「おとわ……私は助かったのか……?」
「おいお前、名前とか覚えてないのか」
「……! 私は……」
「あらどうにか起きたみたいね? まずこれを飲んで?」
「えっ……ありがとうございます……」
自分の状況も把握出来ていないのだろう。
コップに汲んだ水道水を一気に半分まで飲むと、彼はやっと人間らしい表情を見せた。
その姿に少しほっとしたのも束の間。
ふらり、とまた男の体が揺れる。
コップを持ったまま、男はソファで座った状態で眠ってしまった。
「……よっぽど、疲れていたみたいね」
「けどどうしてここに……」
「分からん。……しかし」
「しかし?」
「こいつがソファを独占したら、私は一体どこで生を受けた理由を考えたらいいのだ!」
「「自分の部屋で考えて(頂戴)」」
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