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「やめて…、くれ。クルスス。」
その声で、コウ・クルススの動きは止まる。
「君がそんな状態で、…全魔力を使い果たしたら…？君は、死んで、しまうよ…。」
ウィステリア・レインの眼差しが、暖かい。
「生きて欲しいんだ。」
はっきりと告げた言葉は、コウ・クルススの胸に刺さる。
「君には、…たくさん、迷惑をかけたよ。…でも、だからこそ、…君の心の奥底にある優しい面も、苦しさも、…わかった。それを知った今、…君も私の…大切な家族なんだ。」
ウィステリア・レインの一つ一つの言葉が、凍りついたコウ・クルススの心を溶かすような気がした。
「きっと君には、…家族が…、いなかったんだろう…？生まれた時から、一人、…国を守る為に…、自分の心を抑えてまで…、生きてきたんだろう…？」
「…あながち、間違いでもないな。」
コウ・クルススの声は、今までの冷たく、何もかも諦めたような口調ではない。
暖かさが混じった、他人を思いやるような声だった。
「君には、…まだまだ…未来がある。だからこそ、…生きて欲しいんだ。」
「お前も、まだ若い。これからだというのに。」
「それでも、…君がいい。コウ。君は最高の、…私の家族だ。」
ウィステリア・レインの目が、閉じていく。
誰も、運命に抗わず、静かにその時を見守る。
「…零を、頼んだ…。」
最期の、力を振り絞った声は、やはり自分のためのものではない。
「ああ。」
頷いたコウ・クルススは、閉じた瞳に向かっていう。
「ありがとう、ウィステリア。」
ウィステリア・レインがかすかに頷いた気がした。
嗚咽と鳴き声だけが響く部屋の中、一人、、コウ・クルススは泣かずに静かにその遺体に黙祷を捧げていた。
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作者名：N | 作成日時：2017年3月19日 23時
