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コウ・クルススは、ゆっくりと起き上がった。
まだ頭痛がひどい。
悪化しているようにさえ感じる。
部屋を出て、隣の部屋を、叩く。
「どうぞ。」
イース・リヴェルタの声だ。
「入るぞ。」
ドアノブを、ひねる。
かちゃっという音とドアが軋む音が聞こえた。
「どうしたのです?クルスス。」
ベッドにいる彼女は、幾分か体が小さく見える。
病気のせいだろうか。
「大丈夫か。」
「ええ…。零さんが、看病してくださいましたから。」
そうはいうものの、まだ血色が良くない彼女は、軽く咳を繰り返す。
「彼女は…、どこへ行った。」
イース・リヴェルタは、瞬きを何度かする。
「ウィステリア・レインさんと一緒に出かけました。」
治癒が付いて行ったのなら安心できる。
「そうか。邪魔したな。」
体の重みが増してきて、立っているのも精一杯な彼は、ばれないうちに早く自分に部屋に戻ろうと踵を返す。
「クルスス。」
その動きは、彼女の声によって、止まる。
「あなたこそ、大丈夫ですか。」
やはり、鋭い女だと心の中で舌を巻く。
「ああ。」
コウ・クルススは、軽く微笑んで見せた。
ーーーー刹那、バタン!という荒々しい物音が部屋中に響いた。
「少し、様子を見てくる。」
コウ・クルススは、重い体を引きずって外へ出る。
ーーーーー深紅の世界が広がるリビング。
真ん中に、零がうずくまり、泣いている。
ウィステリア・レインがそれを静かになだめている。
「助けてください!ウィストが…!死んでしまう!」
「大丈夫だよ。零。」
ウィステリア・レインがなだめる声は、あまりにか細く、消え入りそうな声で、コウ・クルススを不安にさせる。
「何があった。」
そっと、零の肩に手を置く。
コウ・クルススの手に、ヌメヌメとした感触がする。
「ミス・マナンティアレに、ナイフで…!」
「治癒は、使えないのか。」
「傷が深すぎて、私の力ではどうにも…!」
悲しそうに首を振り、絶望に打ちひしがれる姿は、儚い。
「俺が、治す。」
コウ・クルススは、基本的に全ての魔法を使える。
治癒が専門ではないが、全魔力を放出すれば、治せないわけでもない。
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作者名:N | 作成日時:2017年3月19日 23時