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その日からAは王族として何ができるかを常に考え、そして家族を守るために日々針の筵にも悪意にも耐え続けてきた。
屋敷を抜け出しては街で庶民に混じって民の声を聞き、自分のできることをがあれば何と言われようと王宮で意見を述べ続ける。
国の政策の中にはAの意見がきっかけのものも少なからずあるが、全てその手柄や報酬がAに渡ることはなかったが、それでも構わなかった。
一時の報酬よりも、一時の悪意よりも、未来の民が少しでも正しく救われるのならそれが王族としての使命だと享受した。
様々な悪意の中ですり減り続ける心の拠り所は屋敷の家族と、王族としての使命感だけだった。
そしてこれからもそれが続くと思っていたのに、状況が変化してしまった。
W国にきてからは自国より待遇が良く誰もAを悪く言う人はいない。
最初こそ戸惑いと気まずさが両者にあったがそれもすぐになくなった。
何度も助けてくれて、分からないことを聞けば教えてくれた。
初めての感情を見せつけられ一生抱かないと思っていた気持ちを自覚してしまった。
暗闇にいたつりもはなかったのに、眩しくて、眩しくて、どうしようもない感情ばかりが胸を締め付けAを離さなかった。
ふっと意識が浮上する感覚に、自身の覚醒を本能的に悟り重い瞼をゆっくり上げた。
見覚えのある天井を見上げ、視線をゆっくり回せば見覚えのある亜麻色の髪がこくりこくりと揺れて舟を漕いでいた。
その首ががくりと落ちかけるとはっとして顔を上げて頭を軽く横に振るう。
そして徐にAを見れば赤い瞳と目が合い一瞬思考停止後、がたりと椅子を蹴倒してAに駆け寄った。
「A様…！」
泣きそうな顔でAが横たわるベッドの周りをうろうろし、状態を確認する。
上半身を起こしてどこにも異常がないことを報告すればエーミールはしんぺい神を呼んだ。
こちらも慌てた様子で駆け寄り、起きているAを見て安堵の表情を浮かべながら問診し、特に異常がないことを確認して息をついた。
「ご迷惑をおかけしました…」
「いえ、ご無事で何よりです」
「駄目やで、エミさん。ええ、本当に一時は危なかったんですよ、A様」
しんぺい神はエーミールに鋭い視線を向けながら、Aにも同じように険しい表情で叱責する。
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…！言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…！！感動しました！！素敵な小説をありがとうございます！更新をお待ちしております！ (2020年12月30日 14時) (
レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：乃鴉 | 作成日時：2020年12月23日 19時
