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汚く悪態をついて手荒くインカムでグルッペンに報告する。
「グルさん、やられた…!あいつらAさん連れ戻して全部の罪を着せて殺す気や!」
「…至急幹部を全員集めろ。緊急会議を開く。チーノはどうしてる」
「相手の新兵とっ捕まえてグルさんの許可待ちや。あっちはチーノに任せてええな?」
「構わん。随時報告だけはするように伝えろ」
「おん」
グルッペンとの通話を切ったトントンはインカムのダイヤルを回して低い声で命令を通達した。
「至急全員会議室に集合、緊急会議を開催する。AさんがX国に連れ戻された、あいつらは全部の罪をAさんに着せる気や」
微かな怒気すら発するトントンの言葉にそれぞれが反応を返しながら5分以内に会議室に集まった。
X国に潜入しているチーノや武器調達でいつもいないとある幹部を除き、しんぺい神も会議室で険しい表情をしている。
ゾムや鬱先生に至っては殺気を隠そうとすらもせず、愛用の武器の握り心地を確かめるように手元で遊ばせている。
シャオロンやコネシマ、ショッピも眉を顰めて嫌悪を示し、温和なエーミールですらそれに悔しさを混ぜた表情で沈黙していた。
「事は時間がないと考えられる。本題に入ろう、X国にいるチーノから三日後にA殿が裏切り者として処刑されるとの情報を知らせてきた。さきほどトントンがA殿の部屋を見てきたが蛻の殻だったそうだ。ただ、部屋の様子からA殿が自らの意志でこの基地を抜け出し抵抗せずに連れ攫われた可能性が高い」
「せやろなぁ、多分家族に対する脅しでも入ったんちゃう?大人しくしなければ代わりに酷いことするとかなんとか言って」
軽蔑するような刺々しい鬱先生の発言に誰も否定しなかった。
X国はそういうことをする国だと、皆の認識が一致していた。
「大先生の言う通りだろう。だが、我々はここで選択しなければならない。A殿を助けるか、見捨てるか」
グルッペンの言葉に、会議室の空気がさらに肌を突き刺すような鋭さを持つ。
主にゾムが殺気を向けこそしないものの、厳しい視線でグルッペンに問う。
「正直に言う。今A殿を助ける公な理由がこちらにはない。王族だが捕虜としても価値が薄く、A殿自身にX国を変えるような力も権力も名声もない。我々が敵対国に乗り込むというリスクを冒してまで、A殿を助けるメリットはない」
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…!言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…!!感動しました!!素敵な小説をありがとうございます!更新をお待ちしております! (2020年12月30日 14時) (レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年12月23日 19時