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「…グルさん、変なこと考えんといてや?Aさんは他国の、それも王族やで?」
「分かってるゾ」
「グルちゃんのこの分かってるほど信用ならないもんはないんだよなぁ…」
「いや、でも確かにグルッペン、それはアカンで。俺でも止めるで」
「何なんだお前ら揃いも揃って。俺は惜しいとしか言ってないやろ」
「それが一番アカン言うとるんや!惜しいてなんや惜しいて!」
「そりゃトン氏、これほどの逸材は」
「アカン!アカンでグルちゃん!言わせへんで?!」
「グルッペンマジやん…」
それぞれが反応を示す中、沈黙していたゾムは一人困惑でついていけないAを横目で見遣った。
「…A」
「は、はい」
呼ばれて慌ててゾムを見上げるAに、ゾムは言葉を落とす。
「俺が付いていける時でええなら、街まで付いてったる」
落とす。
それはもうまたも場が静まり返るほどの爆弾を。
Aですら、常のAに対するゾムの態度ではあり得ない提案に一瞬固まってしまったが、伺うように瞳を揺らせて問う。
「それは…ありがたいのですが、ゾム様のお時間をいただくわけには」
「俺が別にええ言うとるからええんや。それともなんや、この基地に軟禁の方がお好みか?」
初対面以降ほとんどと言っていいほど接触がなく、あったとしてもAが挨拶しそれに無言を返す関係だったゾムの態度の変わりようにトントンたちが顔を見合わせ一斉に首を傾げた。
Aにしてもなぜここまでゾムが心変わりしたのか皆目見当もつかなかったが、それでも悪意で言っているわけではないことを察して恐々と頷いた。
「それでは、ゾム様が大丈夫な日にお願いできればと…」
「ん、任せろ」
ゾムとの約束を機に、もう同じ理由で基地を抜け出さないように約束をしたAだが、ふと沸いた疑問を口にせずにはいられなかった。
「そういえば、名前…」
「なんや」
「私の名前、ゾム様覚えていてくださったんですね」
「そりゃ他のやつがあんだけ連呼すれば誰だって覚えるやろ」
「でも、呼んでくださったのは初めてだったので」
「…なんや、呼び捨ては不服か」
「そんなことはありません。ただ、少し」
「少し?」
「嬉しかっただけです。ずっと嫌われていると思っていましたから」
「……別に、嫌いやって言うた覚えはないねんけど」
「そうですね。興味がない、でしたね」
「なんやお前案外ねちっこいな?!まだ根に持っとるん?!」
「物覚えがいいだけです」
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年6月24日 19時