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「あー、分かった。なら常習犯っちゅうのは?ほんまに自国でも同じことしてはったんですか?」
「……正直、この取り囲まれる雰囲気が家の者からのお説教と全く同じで心底憂いております…」
遠い目をしながら遠回しに、自国でも同じことをして怒られていたことを白状すればトントンはどう言葉を選べばいいのか悩み、同じ気持ちだったのだろう鬱先生と見合わせていた。
「俺は嫌いやないで!2階とはいえ軍人でもないのに道具一つで一人で降りられるんはすごいな!」
「ありがとうございます、コネシマさん」
「いや、褒めとる場合とちゃうでシッマ。これもしAさんに何かあったらこっちの責任問題になるんやで?」
「大先生の言う通りやで…それにしても見事に印象が崩れ去っていったわ」
「新しい一面、と言っていただければ」
「この子意外とタフやな?グルッペンからもなんか言ったってや」
トントンが困ったようにグルッペンに発言を求めれば、求められたグルッペンは思案するようにじっとAを見つめて言った。
「なぜ、自ら子供を助けた。見回りの兵士や警官に任せる手もあったはずだし、そもそもそうするべきだった。自ら動く必要性をどう説いたのか、聞きたい」
真剣な表情で問うグルッペンの言葉に、Aは間髪入れずに答えた。
「王族としての責務だからです。他国とはいえ、困っている民がいれば手を差し伸べるのは王族という権力者の責任でもあるからです」
その言葉に、ゾムは自分に対しても同じ言葉を向けた時のAの瞳を思い出していた。
王族としての責務。
自身は身分が低いと言いながらも王族として抱く覚悟は本物というアンバランスさがゾムのなにかを刺激していたが、ゾム自身それを深く掘り下げることなくグルッペンの反応を待った。
千草色の双眸を微かに細めてじっとAを見つめる様子は無表情で、何を考えているのか全く分からない。
不意に口角が上がったかと思えば、一言。
「惜しいな」
その言葉に含まれる意味と意図をA以外の幹部全員が正確に読み取り、瞬時に場が静まり返った。
トントンが恐る恐るといった感じでグルッペンを諭すように声をかけた。
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年6月24日 19時