【wrwrd】強さを教えて【zm】 (ページ48)

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「そういえば一人一個でも一つ余っとるけど、Aさんが食べるん？」

「あ、いえ…その」

後片付けの手を止めることなく、だがAの言葉をゆっくり待つ二人にAは視線を何度も彷徨つかせたが最後のシュークリームの処遇について思うまま口にすれば。
微かに目を見開いた鬱先生はすぐに目尻を下げて善は急げとその案を全面的に肯定した。
キッチンの後片付けも終わり、三人が向かったその先のドアをノックすれば、「入れ」という低い声が三人の入室を許可した。
鬱先生がドアを開け、緊張した面持ちのAが先頭に立って部屋主の前まで歩く。

「何だ、揃って」

総統執務室、グルッペンの執務室の中で部屋主が首を傾げれば何故か一緒に作業をしていたらしいトントンも顔を上げて三人の動向を見ていた。
Aが後ろ手にした手を前に持っていき、それをグルッペンの執務机の上に置くとグルッペンは微かに目を見開き、Aを見上げて説明を待つ。
ソファに座っていたトントンも興味深そうに近寄って覗き込み、同じように鬱先生に視線を遣った。

「あの、以前甘いものがお好きとお聞きしましたので…拙いものでお口に合うか分かりませんが、感謝の気持ちのつもりです」

微かに不安そうなAの表情を見つつ、もう一度机の上に戻すグルッペンの目には一つの素朴なシュークリーム。
ここ何ヶ月が軍基地に滞在して、グルッペンが甘いものが好きだという話を聞いたAの中で、あの最後の一個はグルッペンに渡そうと作る前から決めていたのだと聞かされた鬱先生はAに見えないように彼女の後ろからトントンとグルッペンに小さく指で円を作った。
こと軍内で位の高い二人において、敵から出される食べ物など毒を入れてくださいと言っているようなもの。
ただAにもちろんそのつもりがないことは分かっているが、形式上疑わざるを得ない二人に幹部であり食に精通している鬱先生からの“OK”マークに二人とも途端に興味本位になった。

「A殿が作られたのか？」

「は、はい。鬱さんに教えていただきながらですが」

「感謝の気持ち、というのは」

「私のような者をここにここに置いてくださり、そして待遇についても、という意味です」

「そのことについてはA殿の誠意に応えたまでのこと」

暗にAの態度が悪ければそれ相応の対応をしたとグルッペンが答えれば、Aは隠さないその本音にくすりと笑みを零した。