【wrwrd】強さを教えて【zm】 (ページ49)

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「むしろどうもうちの連中に振り回されているみたいで申し訳ない」

「いえ、自国では中々感じることがなかっただけにとても楽しいです」

「そう言ってもらえるなら有り難い」

ふっと笑みを零したグルッペンはAが作ったシュークリームを小さく齧る。
凝った味ではないがしっかりと生地の甘味とカスタードの味が書類仕事で疲れた脳を癒していき、自然と目尻を下げた。

「美味い」

思わず漏れたグルッペンの呟きに、Aは勢いよく鬱先生に振り向き鬱先生は笑顔でAにピースを返した。
甘味好きで舌が肥えているだろうグルッペンからのたった一言に、Aは嬉しさのあまり胸の前でぎゅっと両手を握って嬉しそうに微笑んだ。

「グルさん、俺も一口ほしいんやけど」

「馬鹿言えトン氏、俺が甘味で良いと言うと思うか？」

「徹夜明けで寝てた俺を起こして書類を手伝わせたのはどこの誰だっけなぁ？グルッペン？」

「トンちがなんでここに居んのか謎やったけどそういうことか…グルちゃん、あんまりトンちに無理させたらアカンで」

「俺が逃げ出すくらいなら睡眠時間を削ると言ったのはこいつやぞ」

「グルちゃん…これからは僕も一応候補に入れてな」

「大先生はガバが多いからエーミールを候補に入れている」

「なんでや？！僕の方がエーミールなんぞよりグルちゃんのこと好きやのに！」

「うるさい気持ち悪い黙れ」

エーミールを引き合いに出された鬱先生がグルッペンに詰め寄ればグルッペンは鬱陶しそうに眉を顰める。
そんな二人を見てトントンが大きくため息をついてソファに戻るタイミングで、Aはまた作ったら今度はトントンにも持っていくと約束すると、目の下を真っ黒くさせながらもトントンは目を細めてその約束に嬉しそうに快諾した。

翌日、朝から大量のシュークリームをトリシア、鬱先生と一緒に作ったAは完成品の内いくつかを箱に詰め、残りを食堂の冷蔵庫を借りて奥の方に隠すように仕舞った。

「ごめんな、ほんまやったら一緒に行ってやりたいんやけど…」

申し訳なさそうな鬱先生に、Aは首を振って逆に感謝を述べた。

「場所は分かっていますし、すぐ戻りますから」

その言葉に鬱先生は眉を下げてもう一度謝ると慌ただしそうに仕事に向かっていった。
本来であればAの護衛は幹部になるが、この日はゾムも含め誰もが忙しそうなためAはトリシアのみ連れてとある場所に行こうとしていた。