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「最初の印象は変わらへんよ。王族の女やって。でもX国の人間の割には出しゃばるようなことはせんし、けどそれも演技の可能性もあるやんか。だからなるべく観察するようにしてたけど、Aも同じ目やった」
「同じ目、ですか」
「AもAで、俺らのことを観察しとった。何でかは知らんけど、でも変に媚びたりせずにそのままのAって感じやったから放っといたんやけど…エミさん覚えとる？Aの脱走事件」
「ああ…A様が実は何度も基地の外にいたお話しですか。すごいですよね」
「まぁその時Aを見つけたのは俺なんやけど、あいつ言うてたから」
「何をですか？」
「国民を守るのは王族の役目でもあるって。他国といえど目の前で困ってる奴が居ったら手を伸ばすんやって。やから猫が木に登って降りれんくなったあの時も、“蝶の園”の子が助けてほしい言うたから助けたって」
「それは…」
「俺はこれでも色んな人間見てきたから、そいつが嘘ついてるかどうかくらいは何となく分かるんや。だから、Aが本気でそう言ってるって知ってもうたから…」
そこまで言って口を噤んでしまったゾムの代わりに、気遣うように眉を下げたエーミールは敢えてその続きの言葉を掬い上げた。
「放っとけなくなりましたか？」
「…おん。貴族も、王族も、偉ぶってふんぞり返って、人の命を何とも感じず何も思わん奴は今でも嫌いや。特に王族は自分たちが偉いからって下の人間の命を軽く見るから」
「けど、A様はそうやなかった。むしろ王族という立場をきちんと理解した上で、その責任と向かい合ってるんやね」
「それもやけど…うーん、なんて言えばいいんやろ。なんか、ちょっと危うい気がしたんや」
やたら首を捻り唸りながら言葉を探すゾムに今度はエーミールは閉口して言葉を待つ。
たっぷり1分ほど時間を使って出たゾムの言葉に、エーミールは思わず絶句してしまった。
「王族やから国民を助けるAの言い分は分かるし、多分悪いことやないんやと思う。けどそれだと王族のAのことは誰が守るんや？軍も貴族も王族より上なんてあらへん。まぁこの国はちょっと特殊やけど…Aが王族である限り、きっと他の国民や貴族は命令に従うことはあっても守るなんて義務はないし確約はできへんやろ」
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作者名：乃鴉 | 作成日時：2020年6月24日 19時
