【wrwrd】強さを教えて【zm】 (ページ37)

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「ゾムさん…それは…」

「なぁ、エミさんも薄々勘づいとったんとちゃう？そもそも何で王族のAが単身でこの国に来る必要があるんや？護衛も侍女も一人も付けんと、敵国になるかもしれない国にやで？」

「それは、A様が友好を結ぶ以外の意図があってこの国に来たと？」

「分からん、でもまともな王族やったらロープ一本で脱走できるほど警備は甘くないはずやしそん時も一人で行動してたような感じやった。貴族でもお忍びですら護衛一人くらいつけるやろ？それなのに、王族のAに誰も付けへんなんてあり得るんか？この国でAに何かあったら、誰が守ってやれるんや？」

王族はいわばその国の顔だ。
何かあればその国に泥を塗るのと同じ、だからこそ王族や貴族は対面や振る舞いを気にすることをゾムは知っている。
知っているからこそ、何度も脱走したり街で自由に動き回るなど、Aのように王族の責任を背負っていると分かっているなら尚更不自然だった。
Aに何かあればそれはその国に何かあったも同然なのだから、そんなことを知らないAではないはずだとゾムはエーミールに問いかけていた。
しかし、それに返す答えを持ち合わせないエーミールはただただ眉を顰めて見つからない答えに思考を深めることしかできなかった。
意図した形ではなかったかもしれないが、エーミールに心の内の一部を吐露したことで多少自分の中で整理ができたゾムはクッキーを食べ終わり紅茶を飲み切ったタイミングで立ち上がった。

「Aが俺らを裏切らん限り、俺はAを守ったらなアカンって思っとるよ。だからエミさんも一応気にかけてやってや」

「…そうですね。それと侍女の件でしたらグルッペンも気にしてたみたいやから、そろそろ付けると思いますよ」

「ふーん、まぁ街まで来られても迷惑やから基地内だけでええって言うといてや」

「ゾムさんがいる時はそうかもしれませんけど、私が一緒の時に街で襲われたらひとたまりもありませんよ…。それに付ける方はロボロさんのところの彼女だそうです」

「…ああ、あいつか」

彼女という言葉に侍女候補をすぐに思い浮かべたゾムは一つ頷いて書庫を後にした。
残されたエーミールは暫く眉を顰めたまま、耳元の幹部用通信機器の電源を入れた。