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「最近はA様にべったり、いつもやったら誘っても逃げてたお茶会にも居るやん」
「…別に」
「ゾムのことやから別に疑っとるわけやないけど、A様に迷惑かけたらあかんで」
「マンちゃん俺のこと子供やなにかと思っとらん?」
「否定せんけどね」
しれっとゾムを子供扱いしたオスマンを、ゾムが不満そうな目で見る。
それを意に介さずオスマンは今度はチョコレートマフィンに手をつけながら仕方なさそうに笑った。
「何かあるんやったら、ちゃんと頼るんやで」
それこそ手のかかる子供を見るような慈愛を微かに含んだ優しい声色に、ゾムは一瞬目を瞬かせたがすぐに口角を上げてオスマンが食べていたものと同じものに手を伸ばした。
「大丈夫や。ちょっと今Aに教え込んどる最中なだけやから」
「…待て、お前何を考えてるんや」
「大したことやないで?ちょっと、な」
明確な言葉を避けるゾムに常の悪戯が頭に過っで眉を顰めたオスマンだが、Aを見るゾムの眼差しが悪戯を考えるそれとは違うことを感じて開いた口を閉じた。
ゾムがAのそばにいるようになってから、Aと接する機会が増え最初に感じた思慮深さと人の好さの印象がますます濃くなったが、それと同時に自分たちに対し最初ほど気負うことがなくなったようにも見えた。
ゾムのAに対する態度の変化も劇的だが、Aの皆に対する態度もまた軟化しているのが明らかであり、オスマンは二人を交互に見て小さく肩を竦める。
「そういえばここにあるお菓子はどこのお店のものなんでしょうか」
ぽつりと零されたAの言葉を拾ったオスマンが笑いながら答えた。
「美味しかったですか?それなら大先生とひとらんに言っていただけたらすごく喜ぶと思いますよ」
「お二人が買いに行かれたのですか?それはぜひお礼も兼ねてお店を聞きたいです」
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年6月24日 19時