課題曲の期限【1】 ページ38
泉くんに何をしていたのか聞く前に『もう暗いから家まで送る』と強引に手を引かれ校門前まで歩いているのが現状である。
彼はゆうくん、すなわち真くんに一体何をしたと言うのか。絶対さっき『ゆうくん』って言ったからね、泉くん。
「それで……泉くんは何してたの」
「それはこっちのセリフ。Aちゃんこそこんな時間まで何してたの」
はぐらかされた。これ確実に真くんに何かしたパターンだ。正直に司くんとレッスンをした事を告げれば怒られてしまった。しかも1人で帰るなとも言われてしまった。大袈裟だなぁ。
「大袈裟だと思ってるでしょ。女の子なんだから危ないでしょお！？」
「わかったから……で、泉くんは何してたの？」
「俺の事はいいの。ほら、送って行くから帰るよ」
言えない事したんだね泉くん。なんとなくわかるよ。大抵の事は聞けば答えてくれる泉くんが答えない。そして聞こえた『ゆうくん』。この2つから考えられるのは『ゆうくんに何かをした』。それしかないよ。私は泉くんの全てを知ってるわけじゃないから本当になんとなくだけど。
そしてはぐらかされて1週間が経った頃。学院に戻ってきた生徒会長・天祥院英○くんによりDDDの発表があった。泉くんの謎は残ったままだったけれど、1週間司くんとレッスンしている間にそれは忘れかけていた。
「そういうわけだから。1週間以内でかさくんが課題クリアできるようにしておいてね」
「1週間以内……その間に合格できればいいんでしょ？」
「そう。一応DDDで使う曲がこれね」
そう言って渡されたデータを受け取りつつ、どういう理由でそんな事を言ったのかまでは理解できていなかった私は、改めてその真意を問いただす事にした。幸い私はしつこくしてもそんなキツく怒られた事もないしね。
「泉くんはDDDに出るって決めたのね？」
「そこはAちゃん次第かな。かさくんが課題曲、つまりはDDDで使う曲を完璧に出来たら出ようとは思ってる」
「なるほどねぇ……」
私はDDDに出るつもりも無ければその資格もないだろうし、頼まれ事の延長線上って感じかな。確かに司くんがKnightsに入る事が出来れば何か変わるかもしれないし。特にやる事もないし引き受けよう。
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作者名：のあ | 作成日時：2022年6月8日 0時
