痛いのは嫌いだった。 ページ7
まだ油は残っている。
跡形もなく燃えてくれるだろうか。
全て、なかったことにできるかな。
攻撃したその瞬間、爆音と炎は一瞬で渦のように流れ込んできた。どうやら雨で失敗してはいなかったみたい。けれど、この男が死ぬにはまだ火力が足りない。
「っは...っは...」
腕の中の男は苦しそうに頭だけを動かしている。そうだよね、動けないよね。だって首に刺したもんね。神経毒を塗り込んだ猫手を。
ねえ、いま、どんな気持ちなの?
少し前に遡る。
「...っ!!?」
「もう逃げられないよ」
隙を見て毒を塗り込んだ猫手で首元を引っ掻いた。
これでこの男は痺れて動けなくなる。ゴウゴウと不気味な音を上げて燃える壁を見た。はやく、早くもっと燃えて。
「なんてことしてくれたんだっ、...すべてっ!!」
「!」
混乱して逆ギレした男が怒鳴った。
「お前が俺を裏切らなきゃあ、お前が子供を殺しとけば生かしてたよ!!お前がっ、お前が逃げようとしたから、俺がお前を殺したんだよ!!!全てお前が悪いんだよっ!!」
「私は露じゃないっ!!!!!」
聞くに耐えられない。私は男の胸ぐらをつかみ、顔を近づける。
「私はAだっ!!誰の男から生まれたかわからない、露の子供だよ!お前の露じゃない!!私は私だ!!」
目を見開いた男は放心して倒れ込んだ。薬が効いてきたのか、絶望したのかわからない。私は男に寄りかかるようにしてしゃがんだ。
竹筒を開けて残り余っていた油を頭にかける。
片目は開かないし、グラグラするし、全身が軋む。
けどもうこれで最後。痛いのも辛いのも最後。
母を愛していた男を両手で抱きしめる。所詮膝枕というものだ。最期に母の面影を少しでも見られるなら奴も幸せなのではなかろうか。
まだ雨は降り続いているのか火の強さが弱まっているようにも見える。だから油のかかった私が炎に包まれたときが、私とアンタの最期だよ。
右目から液体が流れる感覚がする。涙かと思って手で拭うけれど、どうやら額から流れた血だった
私は、みんなを守れたのだろうか。
それとも、これは結局私の私怨が起こしたものだったの?もう何もわからないや。
だからもういい。考えるのも面倒くさい。
「...ね、アンタさ、さっき全てお前のせいって言ってたよね」
男は痙攣している。薬が効いているのだ。
「...っは、はあっ、はっ...」
「やっぱそうかもしれない。ね、ちょっと聞いてよ」
目をゆっくりと閉じた。
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苺たると(プロフ) - 涙腺ゆるゆるにして見てました…。こういうネタ大好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます! (2020年6月29日 21時) (レス) id: 4ddd192ae6 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - MadHatterさん» ありがとうございます!この小説を楽しみにしていただけたら幸いです!無理をせずゆっくり書いていきたいと思います! (2018年3月23日 18時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
MadHatter(プロフ) - ボロボロ泣きながら拝読させて頂きました。続き楽しみにしております。無理だけはなさらないでください。 (2018年3月23日 2時) (レス) id: 17134202e7 (このIDを非表示/違反報告)
かまぼこうどん(プロフ) - ざわさん» ありがとうございます。3月以降から本格的に更新を再開したいと思います。今回は生存報告としての今の現状とお話をあげさせて頂きました。引き続き応援よろしくお願いします。 (2018年2月12日 23時) (レス) id: 4829cee081 (このIDを非表示/違反報告)
ざわ(プロフ) - ドキドキしながら一気読みしてしまいました! この作品大好きです!素敵な小説をありがとうございます。受験はもうラストスパートでしょうか?お勉強頑張ってください!このコメントが届いているかどうかわかりませんが、心から応援しています...! (2018年2月6日 23時) (レス) id: c9576dec0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かまぼこうどん | 作成日時:2017年7月3日 22時