第28話 ページ28
「ま、待って。待ってください」
赤いシャツの人は1度浴槽に浸かってるからびしょびしょだ。しかしこの際、カーペットが濡れることは置いておく。
あまりにも有り得ない状況にうまく頭が回らなくて、混乱したまま彼らのおしゃべりを遮った。
「‥‥ちょっと、整理させてください」
静かになったリビングで、ぐるぐると思考を巡らせる。
お風呂に入る前までテーブルの上にいたあの子たちは、見渡す限りはどこにもいなくて。
代わりに、この人達が正座でこちらを見上げている。
彼らは当然のように、えふびー、きっくん、あろま、えおえお、とお互い呼びあっていて。
誰がどの名前に該当するのか、なんとなく、わかってしまったわたしがいて。
要するに、この人達は。
「‥‥‥‥あの子たち、‥‥?」
こくこくと、頷く姿は、まさに。
驚く程に重なる面影に、頭が痛くなる。
‥‥いや。ちょっと待って。
この人達が、あの子たちなら。
一緒に過ごした時間は、この人達との時間で。
ご飯も、おやつも、行ってきますもただいまも、
お風呂、も。
「‥‥‥‥‥‥最低!!!!!」
「へぶ!!!」
「あばす!!!」
「であ!!!」
「ぶえ!!いだ!!!え!なんで俺だけ2回!!?」
それぞれに一回、あろまさんだけ2回、またまたビンタをかました。
「泣かないでよぉ」
背中に、きっくんの声がかかる。
わたしはふるふると首だけ振って、膝に顔を埋めていた。
「もう‥‥お嫁、行けない、!」
「大丈夫だよAちゃん、俺がもらってあげるから」
「嫌‥‥」
「マジトーンで否定しないで‥‥」
「ウケるんですけど」
「てめーもフォローしろよあろま!」
出てってくださいと言えば、靴がないので今は無理だと訳の分からない屁理屈を言われた。
しゃがみこんですすり泣くわたしの周りに、ほっぺたにくっきりと手形のついた4人が同じように座り込んで、わたしを励まそうとしている。
「Aさん‥‥ごめんね」
低い声で謝るのは、えおえおだ。
もうやだ。この人こないだベランダで見た人じゃん。もうあの時からフラグが立ってたんだ。
「ほんとにごめんなさい‥‥」
えふびーはとても申し訳無さそうに、消え入りそうな声で呟く。
「悪かったよ。でも俺合計で3発ビンタ喰らってるからな?」
ちょっとは悪びれろよあろま。
「Aちゃん、顔上げて‥‥?」
ずっと背中をさすってくれてるきっくん。
どんな顔しろと言うんだ。
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こばやし(プロフ) - ももっとさん» こちらにもありがとうございます!意外とこういう変わり種が好きな方がいらっしゃって嬉しいです笑 ほどほどにやらかしつつ、これからも頑張ります!笑 (2017年7月21日 2時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
ももっと(プロフ) - 最近の作品から手繰らせて頂きました……本当に好きです……本当に……可愛すぎ…… (2017年7月21日 1時) (レス) id: a5964b6165 (このIDを非表示/違反報告)
も(プロフ) - 雑帽笑笑!次作も頑張ってください( ; ; )ほんとに応援してまーす! (2017年6月19日 23時) (レス) id: 4434e0f296 (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - えなさん» お世話様です!いつもありがとうございますっ!次もお楽しみ頂けるよう頑張りますので、何卒よろしくお願いしますっ!! (2017年6月19日 23時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - らなかさん» コメントありがとうございます!5週!!??読み返せば読み返すほどアラが出てしまうので御手柔らかにお願いしますっ!!笑 (2017年6月19日 23時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こばやし | 作成日時:2017年6月14日 21時