第18話 ページ18
「ただいまぁ‥‥」
いつもよりも重く感じる玄関を、押し開ける。
「ぶろっちょー!」
「わおーん!」
玄関の段差に腰掛けて靴を脱いでいると、出ていく時と変わらない様子で駆け寄って来てくれるきっくんとえふびー。
わたしは座り込んだまま、2匹の頭をこしょこしょと撫でる。
「ちょあ?」
なんとなく落ち込んだ空気を察したのか、えふびーが不思議そうにわたしを見上げてきた。
うん、今日も君はかわいいよ。
「‥‥今日はちょっと、疲れた」
本当は、すぐにでも泣いてしまいそうだった。
今まで、大きな失敗なんてした事がなくて。
万能とまではいかないけれど、真面目にやってきたから、そこそこみんなからの信頼もあると思っていて。
こんなことで見放すような職場ではないのはわかってるんだけど。
「‥‥‥‥‥‥はぁ」
それが全部、崩れ落ちた気分だ。
「‥‥にゃ」
あろまの声がして視線を落とせば、いつの間にかえふびーときっくんの横には、あろまとえおえおも来ていた。
4匹揃って、同じような顔でわたしを見上げている。
「‥‥ごめんね、‥‥ちょっと」
慌てて顔を前に戻す。
心配かけたくないんだけどな。
ゆらゆらと、目の前の玄関の扉が歪んでくるのがわかった。
「‥‥‥‥、」
こみ上げてくるものに、声もなく耐える。
いい歳した大人が、こんなことで泣くなんてみっともないけど。
「‥‥‥‥妖精さんたちになら、見られてもいいや」
笑ったつもりが、思ったよりも弱々しい声が出てしまった。
「‥‥‥‥わん」
すり、と、床についた手に擦り寄ってくる感触が、ひとつ、伝わってきた。
それはふたつ、みっつと増えて、よっつになる。
みんな、わたしを元気づけようと、寄り添ってくれてる。
「‥‥‥‥ありがとう」
どんな激励の言葉よりも、今は。
見守ってくれる四対のきれいな目に、救われた。
「こら!暴れるな!」
じたばたと手の中で暴れるえふびーをおさえつける。
今はご飯も食べ終わって、お風呂である。
「ちょあーーー!!」
「おとなしくしなさいっ!」
「‥‥‥‥」
「あっ、こらえおえお!君もこっち!」
「えおーーー!!」
こっそり逃げようとするえおえおもとっつかまえる。まったくこの子はすぐ逃げようとするんだから。
「ほら!きっくんとあろまはもう入ってるよ!君たちも観念しなさい!」
「ちょあーー!」
「えおーー!」
手の焼ける子たちのおかげで、すっかり元気なわたしである。
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こばやし(プロフ) - ももっとさん» こちらにもありがとうございます!意外とこういう変わり種が好きな方がいらっしゃって嬉しいです笑 ほどほどにやらかしつつ、これからも頑張ります!笑 (2017年7月21日 2時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
ももっと(プロフ) - 最近の作品から手繰らせて頂きました……本当に好きです……本当に……可愛すぎ…… (2017年7月21日 1時) (レス) id: a5964b6165 (このIDを非表示/違反報告)
も(プロフ) - 雑帽笑笑!次作も頑張ってください( ; ; )ほんとに応援してまーす! (2017年6月19日 23時) (レス) id: 4434e0f296 (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - えなさん» お世話様です!いつもありがとうございますっ!次もお楽しみ頂けるよう頑張りますので、何卒よろしくお願いしますっ!! (2017年6月19日 23時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - らなかさん» コメントありがとうございます!5週!!??読み返せば読み返すほどアラが出てしまうので御手柔らかにお願いしますっ!!笑 (2017年6月19日 23時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こばやし | 作成日時:2017年6月14日 21時