第41話「永遠を送る」 ページ41
.
「お前がこんな有様になって、あのガキがどんな顔すんのか楽しみだ」
そんな言葉を零し、頭にぽんと手を乗せる。
「あばよ、忠犬の嬢ちゃん。来世はもっと上手く生きるこった」
そう言って、男は消えた。
最初からいなかったかのように、未だ頭に残る温もりだけ残して、消えた。
「ゔぅぅゔううう」
背後から唸り声が聞こえた。
獣が死に際に放つような慟哭。死ぬ前に私を仕留めようともがく哀れな叫び。
身体が歪にひしゃげた女が立っていた。
しかし立つのもやっとと言わんばかりの有様で、私と対して変わんないなとぼんやりした脳内で考える。
「し、し死しし死"、死ね！！死"ね！！！」
女は取れかけの腕を振り、血を撒き散らしながら何かを放った。私は何も見えないそれを見つめるばかりで、理解など出来るはずがない。
ああ、最後まで君と同じ景色が見れないなんて
「A」
ぐしゃり。
怨念に支配された女の身体が押し潰され、まるで礫死体のように地面にへばり付いた。鮮血が辺りに飛び散る。
振り返った。
「悟おぼっちゃ、ま」
私が名を呼べば、彼は酷く顔を歪ませた。
私の腹部にぽっかり空いた穴。そして皮膚に現れた紫色。きっと彼はすぐに察した事だろう。
「毒、か」
「うん。そう……みたい、ね」
「苦しいか」
「……分かんない、な。感覚、わかんないから」
「A。……死ぬな、」
「………うん……ごめん、お坊ちゃま。……ちょい、無理み、かも」
君の顔、ちょっとしか見えなくなってきたから。
ようやく待ち望んだ声。これほど君に会いたいと思ったことはなかった。
強く願った想いは実ったらしい。神様なんて信じてなかったのに。
珍しく君は息を乱している。そしていつもより、とっても怒ってるように見える。
お坊ちゃまもお坊ちゃまで頑張ってたのかな。
私みたいに弱くないから、きっと彼の方が大変だったんだろうな。
とうとう力が無くなって、身体が地面に倒れた。
痛いと思う感覚すらなくなった。麻酔が打たれたように、何も感じない。
あんなに楽しかったのになんでこうなったんだろう。
これも運命ってやつ？人生ってうまくいかないな。
「……は、？なんだよ、これ」
お坊ちゃまが戸惑いの声を上げた。
そちらへゆっくりと目を向ければ、彼は私の手を掴み、凝視している。
私の身体は、少しずつ光となって消えていく。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1259人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ツナ(プロフ) - 話しの内容がすごく好きでした (2021年1月2日 20時) (
レス) id: 60d9289c8a (このIDを非表示/違反報告)
腐りかけの果物(プロフ) - どうもこんばんは、見直してたら腐りかけの林檎が出てきて改めて私の名前と一致かと思いましたが私の場合果物でした (2020年12月8日 20時) (レス) id: 4dd29108fd (このIDを非表示/違反報告)
なて(プロフ) - 給料どんどん減ってくの好きです。 (2020年12月7日 19時) (レス) id: e2a15ae5f0 (このIDを非表示/違反報告)
ことこと - もう、pixivで書いてきたらどうですか・・・ (2020年12月2日 17時) (レス) id: 360ee8aa85 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 一章完結おめでとうございます！！最後泣きました！2章がどうなっていくのかが楽しみです！！ (2020年11月22日 15時) (レス) id: af1bba7450 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Nny。
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年11月15日 10時
